ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする
留吉から聞かされた会話の内容が、岳の体内に歪んで入ってくるようだった。
今まで自分が信じていたものはなんだったのかと、心を突かれた空虚感だけが残ってしまう──
「……じゃあ、でも、どうして久藤はわざわざそんなことを俺に」
「恐らく君は…昔に仕込んだ小さな種、だったのかもしれない。君が復讐の種を花開かせてもしなくとも久藤にとってはどっちでも良かった……もしかしたら他にも蓮見を陥れる罠を考えていたのかも」
「いやっ、でももし薫子さんと俺が結婚して蓮見のものを受け継いだとしても……なぜそれが久藤にとって好都合なんですっ?……久藤のところには一銭も──」
『密室で仲睦まじく手を絡ませ恋人繋ぎしてたんだぞっ、それって何かおかしくないか?!』
──ふと、先日の神谷の言葉が脳裏を過ぎる。
何かが引っ掛かるとつい先日、冠衣に久藤のことを調べてほしいと依頼したばかりだった。
(──もしかして久藤は……)
バラけていた線が少しずつ一本に繋がっていくような気がした。
「元はと言えば、根本的な原因は私にあるんだ。私が無理にあんな男の元へ娘を嫁がせ事業を拡大させようなどと考えたから……何もかもが最悪な方へと転がってしまった」
頭を抱えフラつきながらパイプ椅子に腰を下ろした留吉は、過去の自分の行いを悔やんでいた。
「岳、お願いっ。
一ノ瀬さんに今まで何があったのか、これから何をしようとしているのか……彼の話しを聞いてあげてほしいの」
正直、まだ頭の中が整理仕切れていない岳にとってわからないことだらけ──もちろん留吉に聞きたいことは山程ある。
岳はベッドで眠る桜葉に優しい視線を向けた後、目を瞑り溜まっていたモヤモヤ感を吐き出すようにハァと息を吐く。
「──とりあえず母さん。
父さんから来た手紙を全て、俺に見せてくれないか」
お知らせ 〜**〜**〜**〜**〜
いつもお読み頂きありがとうございます( ੭ ˙ᗜ˙ )੭
自分事で恐縮なのですが、年末年始が近付くにつれ自分の忙しさも増していき、執筆がなかなか進められず……。
ここで一旦、章が終わるタイミングで申し訳ありませんが、執筆が進められるまで勝手ながら少しばかりお休みを頂きたいと思っております(;_;)
執筆開始から毎日更新していたのでとても残念ですが、またすぐに更新開始できるよう頑張りたいと思っています。
宜しくお願い致します。
埜なみ