ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする
19.繋がり
ガッッ!!》》》
「痛っっ!」
少しずつ覚醒していく中、ズッシリと重たくなった瞼を桜葉は一生懸命開けようとしていた。
目は覚めたのに頭の中はまるで靄のかかったような重だるさが続いている。
──私、は……一体何を……
ここは…どこ?
今……何時?
私は何をしていたんだっけ?
(……真っ暗…まだ、夜中…?)
何もわからず気怠い上半身を起き上がらせようとしたその時、半分も起きられない所で桜葉は頭を何かに強打してしまう。
「…え、な、なに?! 起きられない──って言うか、ここどこっ?」
結局、身体を起き上がらせることも出来ず寝転んだまま、暗闇の中をペタペタと手探り状態で確認してみる。
するとそこは暗くて狭い場所だということはすぐにわかった。
桜葉が足を伸ばすことも出来ず今は折り曲げている状態であること、それに上や左右を触ってみるとすぐ壁に当たってしまうこと……とても窮屈で真っ暗な場所のようだ。
頭を強打し逆に目がハッキリ覚めた桜葉の記憶も少しずつ戻りつつあった。
(── …そうだ……確かあの時、久藤さんの部署を訪ねていって…それで……)
── それは今から約十一時間前 :午前六時頃に遡る
岳のマンションを出て自分のアパートへ戻るはずの桜葉だったが、実はその前にある人物の元へと訪ねてみたかったのだ。
その人物と初めて出会い部屋に上がった時からずっと気になっていたこと、確かめたいと思っていたことが桜葉にはあった。
彼が話さないのは何か理由があるんだと思いそれならそれでいいと……聞かずに知らないふりをしていようと。
ガチャ──
「……え…さよ、ちゃん?」
チャイムを押し玄関から出てきたのは桜葉の隣に住むトメであった。
何とも驚いた表情を浮かべながら桜葉を見つめている。
それもそのはず──つい昨晩、桜葉の容態が安定した後は岳の家に連れて行かれたはず、それがこんな早朝に今自分の目の前にいるのだから。
「…こんな早くに訪ねて…ごめんなさいトメさん」
「あ…いやいや、年寄は朝が早いもんでとっくに起きてはいたんだが……それよりもさよちゃん、体調はもう大丈夫なのかい?」