ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする


いつにもなく力強い口調で話す潮くんに戸惑いつつも、彼からのその聴き慣れないストレートな言葉は私の顔を赤らめさせるのに充分だった。

「あ、ありがとう、…なんか、改めて言われると照れちゃうね。
…でも、こういう格好ってほとんどしたことないから実はあまり慣れてなくて…ちょっと恥ずかしいかも」

「でも、本当に似合ってるんで……あー、でも確かに俺的にはあまり可愛い格好はしてほしくないっすね」

「そ、そうだよねっ、やっぱりこんな格好、私には分不相応──」

「いやいや、違うっす!
俺的には桜葉さんのそんな可愛い姿……他の男共には見せたくないって思ってしまうから」

(── え…?)

潮くんの突然過ぎる甘々な言葉にどう反応して良いものか分からず、真っ直ぐ見つめてくる潮くんの視線から私は慌てて目を逸らしてしまったのである。

(あ、あれ? な、なんか潮くん、いつもと違くない?
……今までも何度か、好意的な言葉は言われたことあるけれど……どれも同期間の冗談としか受け止めていなかったし…なのに、今日の潮くんは妙にストレート過ぎると言うか)

「あ、え〜と…きゅ、急にどうしたの潮くん?
今日はやけに褒めちぎってもらえるな〜って言うか──あっ! もしかして潮くんも飲み過ぎちゃったとか? もしそうだったら早くお茶をいっぱい飲んだほう、が──」

それもまた突然の行動だった。

瞬く間に自分の体は力強く逞しい腕に抱き寄せられ、気付いた時には私は潮くんの筋肉質な胸元へとスッポリ収まる状態になってしまっていたのである。

一体何が起きたのだろう──私の頭は思考が停止し空っぽ状態、今の状況が把握できずにいた。

「……え…っと、あの、う、潮くん?」

「桜葉さんは、今まで冗談だと受け取っていたのかもしれないけれど……俺、本気で桜葉さんのこと好きなんです。
── だから桜葉さん、俺と…付き合ってもらえませんか?」




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