【シナリオ版】セーラー服を脱ぐ前に〜脅迫されて 溺愛されて〜【小説版連載開始につき更新停止しています】
第一話
〇社長室
社長室の席に座る祖父。
その隣に真紘が立っている。
長身痩躯で黒縁眼鏡をかけた真紘(27歳)は整った顔立ちをしており、部屋に入ってきた公子は少し胸をときめかせる。
祖父「公子。彼と結婚して、男児をもうけなさい」
ときめいていた表情が凍り付く、セーラー服姿の蓬莱公子(高三)。
公子(初対面なんですけど!?)
○(回想)公子の自室
公子「よし!」
パソコンの前で小さくガッツポーズをする公子。
パソコンの画面には、合格の二文字が表示されている。
公子(この二文字を見るために、ずっと頑張ってきた)
(最難関国立大学――でもこれは、ゴールじゃない。ここからが、私の夢のスタート)
堪えきれない笑いに、一人パソコンを見てにやけている公子。
パソコンの横に置いてある、スマホが着信を告げる。
画面には「お祖父様」の文字。
笑顔が引っ込み、公子の眉間にシワが寄る。
公子「もしもし、お祖父様?
もちろん合格していましたよ。約束、ちゃんと守ってくださいね」
「え、今すぐですか?
構いませんけど、自宅なので一時間ぐらいかかりますよ」
公子(社長室になんて、珍しいな)
(お祖父様の会社は高級旅館を営む蓬莱グループ。
旅館以外にも数多の不動産を所有していて、ここもお祖父様の所有するマンション)
(敏腕社長ではあるけれど、ワンマン社長でもあって――孫の私に対してもそうだった)
(小六のときに事故死した両親に変わって育ててくれた恩はあるけど、横暴なタヌキジジイって感じ)
公子「なんか、嫌な予感がするな」
電話を切ったスマホを見つめて、険しい顔をする公子。
(回想終わり)
○社長室
公子(やっぱりロクデモナイことだった)
肩を落としている公子。
ちらりと真紘を見ると、にっこり微笑まれる。
赤くなり目を逸らす公子。
公子(確かにカッコイイけど、年離れ過ぎでしょ)
公子「結婚って、どういうことです? 第一志望に合格すれば、進学を許可してくださる約束ですよね?」
祖父「もちろん! 公子の夢はじいじも応援しているよ。でも、公子には女としての幸せもつかんで欲しくてな」
悪気は一切ない笑顔で祖父が言う。
祖父「社会に出てから結婚妊娠出産していてはキャリアが途絶えるだろう。学生のうちなら、浪人留年珍しくないからな。一時休学して子育てしていても、巻き返しが効きやすいだろう」
良い考えだと笑顔の祖父とは対照的に、公子はげんなりしていく。
公子(確かに一理あるかもしれないけど――)
公子「結婚も出産もしないっていう選択肢はないんですか?」
祖父「は?」
心底きょとんとした顔をする祖父。
公子(ダメだこりゃ)
祖父から顔を逸らし、ため息をつく公子。
公子「そもそも、この方はどこのどなたなんです?」
祖父は諦めて真紘に矛先を向ける公子。
真紘は柔和な笑みを崩さない。
真紘「橘法律事務所の本田真紘と申します」
恭しくお辞儀をする真紘。
祖父「顧問弁護士の橘先生は公子も知っているだろう。あそこの若手ホープだ。公子の年にはもう弁護士資格を持っていた天才だぞ!」
驚く公子の脳裏に、当時のニュース記事がよぎる。
真紘「僕なんてただの法律オタクなだけですよ」
謙遜する真紘に朗らかに笑う祖父。
公子は怪訝な顔になる。
公子(確かに凄いけど……)
公子「それより、今はおいくつなんですか……?」
顔を見合わせる真紘と祖父。
祖父「一回りは離れてないぞ」
公子「一回り近く離れてるってことですね」
真紘「今年で27歳になります」
すっとぼけようとする祖父に公子はすかさずツッコミ、真紘は正直に答える。
公子(アラサーのおじさんじゃない)
公子「本田真紘さん、27歳……とても優秀な弁護士さんでいらっしゃるのですね。私にはもったいない方ですので、お断りさせていただきます」
お見合いの常套句を口にして、深々頭を下げる公子。
祖父「もったいなくないぞ!公子。難関大学に合格したんだ、十分釣り合う」
オブラートが通じない祖父に、ため息をつく公子。
公子「嫌だと言ってるんです!こんな初対面の知らないおじさんと結婚だなんて!」
真紘「おじさんですか……」
公子の言葉に少し傷つき苦笑する真紘。
祖父「公子、大学の入学金のことなんだが」
突然、話が変わった祖父に、目を丸くする公子。
真紘「社長」
祖父「わかっておる」
咎めるような真紘の声に、渋い顔をする祖父。
祖父「近ごろ年のせいか物忘れが激しくてな」
祖父の言わんとするとこに気がつき、目を尖らせる公子。
祖父「うっかり入金を忘れないか恐ろしくてなぁ」
公子「脅迫する気ですか?」
祖父「なんのことかの?」
真紘「社長は加齢への不安をお話しされているだけですよ」
公子は真紘も睨みつけるが、知らん顔だ。
公子(ホント、最悪!)
〇社長室
ソファーに腰掛ける公子。
向かいのソファーには祖父。
公子の後ろには真紘が立っている。
公子と祖父の間の机には、婚姻届が置いてある。
公子(たかが、紙切れ一枚よ)
そう思ってペンを手にするが、手が震えて書き始められない。
公子「そういえば! 女性も結婚年齢18歳に引き上げられたのよね!? 私、誕生日まだだから17歳なんだけど」
真紘「公子さんは令和4年4月1日時点で16歳以上でしたので、経過措置により親の同意があれば婚姻可能です」
祖父「亡き息子夫婦に代わって、認めよう」
冷静な真紘とにっこり笑う祖父に挟まれて、公子はとうとう婚姻届にサインをする。
真紘「これからよろしくお願いします、公子さん」
婚姻届を公子の手元から取り上げて、後ろから公子の耳元にささやきかける。
耳を押さえて真っ赤になるも、睨みつけるのを忘れない公子。
祖父「本間くん、お手柔らかにな」
満足そうな祖父を、真っ赤になったまま公子は睨みつける。
○車内
運転席に真紘、助手席に公子が座っている。
公子「ロリコンなんですか?」
公子のストレートな物言いに、思わず声を上げて笑う真紘。
真紘「まあ、否定は出来ませんね」
笑いながらエンジンをかけて、車が走り出す。
真紘「今日から夫婦なんですから。仲良くしましょうよ」
公子「そんな気、毛頭ありません!私に指一本でもふれたら、毛根死滅させてやりますから」
すごむ公子に、吹き出す真紘。
真紘「まだハゲたくはないですね……
その割には、素直に車に乗ってくれるんですね」
公子「お祖父様の命令ですから」
公子は窓の外にそっぽを向いて、真紘を見ずにツンとしている。
信号待ちの最中、そんな公子の横顔を愛おしそうに真紘は見ているが、公子は気づいていない。
〇マンション・エンドランス
コンシェルジュのいるエントランスを通り過ぎる二人。
公子「まだ一緒に来る気なんですか?」
真紘「もちろん」
エレベーターに乗り込む二人。
公子はため息をついている。
真紘が階数ボタンを押すが、それを見た公子は目を丸くする。
公子「私の部屋は一個下ですよ」
真紘「いえ、合ってますよ」
真紘の言葉に首を傾げる公子。
真紘「社長がワンフロア上に新居を用意してくださったんです」
硬直する公子に、真紘は楽しそうに笑いかける。
真紘「夫婦には同居義務があるんですよ」
社長室の席に座る祖父。
その隣に真紘が立っている。
長身痩躯で黒縁眼鏡をかけた真紘(27歳)は整った顔立ちをしており、部屋に入ってきた公子は少し胸をときめかせる。
祖父「公子。彼と結婚して、男児をもうけなさい」
ときめいていた表情が凍り付く、セーラー服姿の蓬莱公子(高三)。
公子(初対面なんですけど!?)
○(回想)公子の自室
公子「よし!」
パソコンの前で小さくガッツポーズをする公子。
パソコンの画面には、合格の二文字が表示されている。
公子(この二文字を見るために、ずっと頑張ってきた)
(最難関国立大学――でもこれは、ゴールじゃない。ここからが、私の夢のスタート)
堪えきれない笑いに、一人パソコンを見てにやけている公子。
パソコンの横に置いてある、スマホが着信を告げる。
画面には「お祖父様」の文字。
笑顔が引っ込み、公子の眉間にシワが寄る。
公子「もしもし、お祖父様?
もちろん合格していましたよ。約束、ちゃんと守ってくださいね」
「え、今すぐですか?
構いませんけど、自宅なので一時間ぐらいかかりますよ」
公子(社長室になんて、珍しいな)
(お祖父様の会社は高級旅館を営む蓬莱グループ。
旅館以外にも数多の不動産を所有していて、ここもお祖父様の所有するマンション)
(敏腕社長ではあるけれど、ワンマン社長でもあって――孫の私に対してもそうだった)
(小六のときに事故死した両親に変わって育ててくれた恩はあるけど、横暴なタヌキジジイって感じ)
公子「なんか、嫌な予感がするな」
電話を切ったスマホを見つめて、険しい顔をする公子。
(回想終わり)
○社長室
公子(やっぱりロクデモナイことだった)
肩を落としている公子。
ちらりと真紘を見ると、にっこり微笑まれる。
赤くなり目を逸らす公子。
公子(確かにカッコイイけど、年離れ過ぎでしょ)
公子「結婚って、どういうことです? 第一志望に合格すれば、進学を許可してくださる約束ですよね?」
祖父「もちろん! 公子の夢はじいじも応援しているよ。でも、公子には女としての幸せもつかんで欲しくてな」
悪気は一切ない笑顔で祖父が言う。
祖父「社会に出てから結婚妊娠出産していてはキャリアが途絶えるだろう。学生のうちなら、浪人留年珍しくないからな。一時休学して子育てしていても、巻き返しが効きやすいだろう」
良い考えだと笑顔の祖父とは対照的に、公子はげんなりしていく。
公子(確かに一理あるかもしれないけど――)
公子「結婚も出産もしないっていう選択肢はないんですか?」
祖父「は?」
心底きょとんとした顔をする祖父。
公子(ダメだこりゃ)
祖父から顔を逸らし、ため息をつく公子。
公子「そもそも、この方はどこのどなたなんです?」
祖父は諦めて真紘に矛先を向ける公子。
真紘は柔和な笑みを崩さない。
真紘「橘法律事務所の本田真紘と申します」
恭しくお辞儀をする真紘。
祖父「顧問弁護士の橘先生は公子も知っているだろう。あそこの若手ホープだ。公子の年にはもう弁護士資格を持っていた天才だぞ!」
驚く公子の脳裏に、当時のニュース記事がよぎる。
真紘「僕なんてただの法律オタクなだけですよ」
謙遜する真紘に朗らかに笑う祖父。
公子は怪訝な顔になる。
公子(確かに凄いけど……)
公子「それより、今はおいくつなんですか……?」
顔を見合わせる真紘と祖父。
祖父「一回りは離れてないぞ」
公子「一回り近く離れてるってことですね」
真紘「今年で27歳になります」
すっとぼけようとする祖父に公子はすかさずツッコミ、真紘は正直に答える。
公子(アラサーのおじさんじゃない)
公子「本田真紘さん、27歳……とても優秀な弁護士さんでいらっしゃるのですね。私にはもったいない方ですので、お断りさせていただきます」
お見合いの常套句を口にして、深々頭を下げる公子。
祖父「もったいなくないぞ!公子。難関大学に合格したんだ、十分釣り合う」
オブラートが通じない祖父に、ため息をつく公子。
公子「嫌だと言ってるんです!こんな初対面の知らないおじさんと結婚だなんて!」
真紘「おじさんですか……」
公子の言葉に少し傷つき苦笑する真紘。
祖父「公子、大学の入学金のことなんだが」
突然、話が変わった祖父に、目を丸くする公子。
真紘「社長」
祖父「わかっておる」
咎めるような真紘の声に、渋い顔をする祖父。
祖父「近ごろ年のせいか物忘れが激しくてな」
祖父の言わんとするとこに気がつき、目を尖らせる公子。
祖父「うっかり入金を忘れないか恐ろしくてなぁ」
公子「脅迫する気ですか?」
祖父「なんのことかの?」
真紘「社長は加齢への不安をお話しされているだけですよ」
公子は真紘も睨みつけるが、知らん顔だ。
公子(ホント、最悪!)
〇社長室
ソファーに腰掛ける公子。
向かいのソファーには祖父。
公子の後ろには真紘が立っている。
公子と祖父の間の机には、婚姻届が置いてある。
公子(たかが、紙切れ一枚よ)
そう思ってペンを手にするが、手が震えて書き始められない。
公子「そういえば! 女性も結婚年齢18歳に引き上げられたのよね!? 私、誕生日まだだから17歳なんだけど」
真紘「公子さんは令和4年4月1日時点で16歳以上でしたので、経過措置により親の同意があれば婚姻可能です」
祖父「亡き息子夫婦に代わって、認めよう」
冷静な真紘とにっこり笑う祖父に挟まれて、公子はとうとう婚姻届にサインをする。
真紘「これからよろしくお願いします、公子さん」
婚姻届を公子の手元から取り上げて、後ろから公子の耳元にささやきかける。
耳を押さえて真っ赤になるも、睨みつけるのを忘れない公子。
祖父「本間くん、お手柔らかにな」
満足そうな祖父を、真っ赤になったまま公子は睨みつける。
○車内
運転席に真紘、助手席に公子が座っている。
公子「ロリコンなんですか?」
公子のストレートな物言いに、思わず声を上げて笑う真紘。
真紘「まあ、否定は出来ませんね」
笑いながらエンジンをかけて、車が走り出す。
真紘「今日から夫婦なんですから。仲良くしましょうよ」
公子「そんな気、毛頭ありません!私に指一本でもふれたら、毛根死滅させてやりますから」
すごむ公子に、吹き出す真紘。
真紘「まだハゲたくはないですね……
その割には、素直に車に乗ってくれるんですね」
公子「お祖父様の命令ですから」
公子は窓の外にそっぽを向いて、真紘を見ずにツンとしている。
信号待ちの最中、そんな公子の横顔を愛おしそうに真紘は見ているが、公子は気づいていない。
〇マンション・エンドランス
コンシェルジュのいるエントランスを通り過ぎる二人。
公子「まだ一緒に来る気なんですか?」
真紘「もちろん」
エレベーターに乗り込む二人。
公子はため息をついている。
真紘が階数ボタンを押すが、それを見た公子は目を丸くする。
公子「私の部屋は一個下ですよ」
真紘「いえ、合ってますよ」
真紘の言葉に首を傾げる公子。
真紘「社長がワンフロア上に新居を用意してくださったんです」
硬直する公子に、真紘は楽しそうに笑いかける。
真紘「夫婦には同居義務があるんですよ」