【シナリオ版】セーラー服を脱ぐ前に〜脅迫されて 溺愛されて〜【小説版連載開始につき更新停止しています】
第三話
○寝室(夜)
真紘「さて、新婚初夜ですが――」
ベッドにネグリジェの公子が固い顔で座っている。
黒いパジャマ姿で眼鏡をかけた真紘が扉の前に立っている。
真紘「僕はさっき言った通りソファーで寝ますので、ご安心してお休みください」
真紘はぺこりと頭を下げると、さっさと寝室を出て行ってしまう。
公子(信用できるか!)
険しい顔で寝室の扉の前に家具を動かしバリケードを設置する公子。
ランプの置かれたサイドチェストに万が一のときのためにハサミを護身用に用意して、電気を消して布団に潜り込み目を閉じるが、すぐに開ける。
公子(…………寝れるか!!)
〇リビング(朝)
真紘「おはようございます、公子さん。昨晩はよく眠れましたか?」
目の下にクマを作った公子がセーラー服に着替えてリビングに行くと、朝食の用意をしていたワイシャツにエプロン姿の真紘が笑顔で振り返る。
キラキラとしたエフェクトが見えるぐらい爽やかな笑顔に、ますます公子の目の下のクマが濃くなる。
公子「お察しの通りです」
真紘「そうですか、それはよかった」
公子のクマに気づいていないはずがないのに、そう返す真紘。
公子(まあ元々、眠りは浅い方だけど)
あくびを噛み殺す公子。
真紘「いつも朝は決まったメニューなので、ついでに公子さんの分も用意させていただきました。不要でしたら、残してください」
公子「いえ、ありがとうございます」
テーブルに座る公子。
クロワッサンにスクランブルエッグ、サラダの乗ったワンプレートとコーヒーが用意されている。
公子「でも、私からの見返りなんて考えないでくださいね」
真紘「ええ、もちろん。ただのついでです。逆を言えば、僕が朝食を食べない日は用意ありませんから。期待しないでくださいね」
期待という言葉を言い返す真紘に、渋い顔をする公子。
真紘「まだ学校があるんですね」
公子「うち学校の卒業式は遅いのよ」
「なに? せっかく花の女子高生と結婚出来たのに、早く卒業して欲しいわけ?」
意地悪そうに言う公子に、真紘は爽やかな笑顔を崩さない。
真紘「いえ。また公子さんの麗しい制服姿が見れて喜んでいるだけですよ」
公子「ロリコン! 変態!」
公子の暴言が飛ぶが、真紘が楽しそうに笑っているので雰囲気は悪くない。
○高校・教室(休み時間)
花織「公子さん、志望校合格おめでとうございます」
「外部進学されてしまうのは寂しいですが、公子さんならきっと合格されると思ってましたわ」
窓際に立つ公子の級友・花織が涙ぐみながら公子の手を握っている。
公子「ありがとう」
応じる公子の表情は柔らかい。
公子(お祖父様に入れられたエスカレーター式のお嬢様学校)
(挨拶が「ごきげんよう」だったり慣れないことも多かったけど、友達には恵まれたな)
公子「花織は大学卒業したら結婚するんだよね? 親が決めた相手って、嫌じゃない?」
花織「そうですね……確かに親同士が決めた許婚ではありますが、嫌じゃありませんよ」
にっこりと微笑む花織。
花織「恋かはわかりませんが尊敬出来る方です。どんな方とでも、お互い誠意を持って接していれば愛情は生まれるものだと思いますから」
公子(誠意、ね……)
公子の脳裏に浮かぶのは、無理矢理婚姻届を書かされるシーン。
公子(愛情が生まれるなんて、どだい無理な話よ)
暗い顔をする公子。
花織「公子さんもお見合いの話が出ているんですか?」
公子「ううん、そういうわけじゃないんだけどね」
明るく笑って誤魔化し、両手を振って否定する公子。
花織「でも進路も決まりましたし……これからそういうお話も出るかもしれませんね」
微笑む花織。
公子(そういえば、お祖父様はなんで真紘さんだったんだろう)
(……賢いから、種馬にピッタリってことだったのかな)
首を傾げて考え込む公子。
公子(花織も知らないみたいだし、先生たちも普通だったし、本当に結婚のことは内緒にしてくれてるんだな)
ため息をつく公子を、花織が心配そうに見ている。
○学校・正門前(放課後)
真紘「公子さん、お迎えにあがりました」
正門前のロータリー。
真紘が車の前に立っている。
固まる公子、口元に手を当てて驚いている花織。
花織「お見合いじゃないっておっしゃっていましたけど……そういうことだったのですね」
キラキラした目で公子を見つめる花織。
花織「あのため息は恋のため息でしたのね。申し訳ございません、お邪魔虫は退散いたしますわ〜」
公子「違っ……!」
公子が引き止めようとするが、公子の恋人が迎えに来たと勘違いした花織は自分の迎えの車にさっさと乗って行ってしまう。
真紘「お手をどうぞ、公子お嬢様」
助手席の扉を開けて真紘が手を差し出してくるが、公子は渋い顔をして動かない。
けれど、他の生徒たちが通りすがりに見ているのに気がつく。
公子「やめてくださいます?」
注目を集めたくないと差し出された手を取り、眉間にシワを寄せエスコートされ車に乗る公子。
○車内
公子「お仕事はどうされたんですか?」
真紘「スケジュールを調整して、少し早めに上がらせてもらいました」
車を運転する真紘。
真紘「結婚のご挨拶をしたい方がいるので、お付き合いいただけますか?」
公子「いったい、どなたにです?」
真紘「公子さんのご両親です――」
真っ直ぐに前を見つめたまま、真紘は言う。
○墓地(夕方)
蓬莱家の墓の前にしゃがみ込み、お線香をあげている真紘。
墓には真紘が用意した花も飾られている。
公子は手を合わせる真紘の真後ろで両手を握りしめてその姿を見ている。
泣きそうな怒っているような公子の表情。
公子「私の両親に、よく顔向けが出来ますね」
公子の言葉に、不思議そうに真紘が振り返る。
公子「お祖父様と共謀して結婚しておいて……」
震える手に、怒りを露わにするが公子の目には涙が滲んでいる。
真紘「公子さん?」
公子の様子に腰を浮かした真紘が手を伸ばしたが、それを払いのける公子。
公子「亡きご両親も大切に思ってますよアピールですか?」
「そんなので私が絆されるとでも?」
ボロボロと公子の目から涙が溢れる。
公子「なんの意味もないですよ」
「こんな場所に、なんの意味もない。死ねば人間、そこで終わりです」
涙を流しながらも、真紘を真っ直ぐ見ている。
公子「パパもママも、ここにはいません。もうどこにもいないんです!」
「なんでここに私を連れてきたんですか!」
その目が閉じられ、悲鳴のような声を上げる公子。
手で目を押さえ、奥歯を噛み締め、泣くのをこらえようとする公子。
それでも涙は止まらず、過呼吸ぎみになってくる。
立ち上がり、公子の肩に触れようとする真紘。
しかし、指一本触れるなという公子の言葉を思い出して、触れかけた手を握りしめて止まる。
真紘「後で毟っていただいて構いませんので、今だけはお許しください」
そう告げて、真紘の手が、公子の肩に触れる。
驚く公子。
ふわりと、真紘が公子を抱き上げお姫様抱っこをする。
驚いてバランスを崩さないように思わず真紘に抱きつく公子。
「泣かないでください、公子さん――貴女が泣くと、僕まで悲しくなる」
至近距離で見つめ合う二人。
公子の額に自分の額を寄せるようにして、哀しげな眼差しで真紘が言う。
驚きに目を丸くする公子の頬は濡れていたが、涙は止まっていた。
真紘「さて、新婚初夜ですが――」
ベッドにネグリジェの公子が固い顔で座っている。
黒いパジャマ姿で眼鏡をかけた真紘が扉の前に立っている。
真紘「僕はさっき言った通りソファーで寝ますので、ご安心してお休みください」
真紘はぺこりと頭を下げると、さっさと寝室を出て行ってしまう。
公子(信用できるか!)
険しい顔で寝室の扉の前に家具を動かしバリケードを設置する公子。
ランプの置かれたサイドチェストに万が一のときのためにハサミを護身用に用意して、電気を消して布団に潜り込み目を閉じるが、すぐに開ける。
公子(…………寝れるか!!)
〇リビング(朝)
真紘「おはようございます、公子さん。昨晩はよく眠れましたか?」
目の下にクマを作った公子がセーラー服に着替えてリビングに行くと、朝食の用意をしていたワイシャツにエプロン姿の真紘が笑顔で振り返る。
キラキラとしたエフェクトが見えるぐらい爽やかな笑顔に、ますます公子の目の下のクマが濃くなる。
公子「お察しの通りです」
真紘「そうですか、それはよかった」
公子のクマに気づいていないはずがないのに、そう返す真紘。
公子(まあ元々、眠りは浅い方だけど)
あくびを噛み殺す公子。
真紘「いつも朝は決まったメニューなので、ついでに公子さんの分も用意させていただきました。不要でしたら、残してください」
公子「いえ、ありがとうございます」
テーブルに座る公子。
クロワッサンにスクランブルエッグ、サラダの乗ったワンプレートとコーヒーが用意されている。
公子「でも、私からの見返りなんて考えないでくださいね」
真紘「ええ、もちろん。ただのついでです。逆を言えば、僕が朝食を食べない日は用意ありませんから。期待しないでくださいね」
期待という言葉を言い返す真紘に、渋い顔をする公子。
真紘「まだ学校があるんですね」
公子「うち学校の卒業式は遅いのよ」
「なに? せっかく花の女子高生と結婚出来たのに、早く卒業して欲しいわけ?」
意地悪そうに言う公子に、真紘は爽やかな笑顔を崩さない。
真紘「いえ。また公子さんの麗しい制服姿が見れて喜んでいるだけですよ」
公子「ロリコン! 変態!」
公子の暴言が飛ぶが、真紘が楽しそうに笑っているので雰囲気は悪くない。
○高校・教室(休み時間)
花織「公子さん、志望校合格おめでとうございます」
「外部進学されてしまうのは寂しいですが、公子さんならきっと合格されると思ってましたわ」
窓際に立つ公子の級友・花織が涙ぐみながら公子の手を握っている。
公子「ありがとう」
応じる公子の表情は柔らかい。
公子(お祖父様に入れられたエスカレーター式のお嬢様学校)
(挨拶が「ごきげんよう」だったり慣れないことも多かったけど、友達には恵まれたな)
公子「花織は大学卒業したら結婚するんだよね? 親が決めた相手って、嫌じゃない?」
花織「そうですね……確かに親同士が決めた許婚ではありますが、嫌じゃありませんよ」
にっこりと微笑む花織。
花織「恋かはわかりませんが尊敬出来る方です。どんな方とでも、お互い誠意を持って接していれば愛情は生まれるものだと思いますから」
公子(誠意、ね……)
公子の脳裏に浮かぶのは、無理矢理婚姻届を書かされるシーン。
公子(愛情が生まれるなんて、どだい無理な話よ)
暗い顔をする公子。
花織「公子さんもお見合いの話が出ているんですか?」
公子「ううん、そういうわけじゃないんだけどね」
明るく笑って誤魔化し、両手を振って否定する公子。
花織「でも進路も決まりましたし……これからそういうお話も出るかもしれませんね」
微笑む花織。
公子(そういえば、お祖父様はなんで真紘さんだったんだろう)
(……賢いから、種馬にピッタリってことだったのかな)
首を傾げて考え込む公子。
公子(花織も知らないみたいだし、先生たちも普通だったし、本当に結婚のことは内緒にしてくれてるんだな)
ため息をつく公子を、花織が心配そうに見ている。
○学校・正門前(放課後)
真紘「公子さん、お迎えにあがりました」
正門前のロータリー。
真紘が車の前に立っている。
固まる公子、口元に手を当てて驚いている花織。
花織「お見合いじゃないっておっしゃっていましたけど……そういうことだったのですね」
キラキラした目で公子を見つめる花織。
花織「あのため息は恋のため息でしたのね。申し訳ございません、お邪魔虫は退散いたしますわ〜」
公子「違っ……!」
公子が引き止めようとするが、公子の恋人が迎えに来たと勘違いした花織は自分の迎えの車にさっさと乗って行ってしまう。
真紘「お手をどうぞ、公子お嬢様」
助手席の扉を開けて真紘が手を差し出してくるが、公子は渋い顔をして動かない。
けれど、他の生徒たちが通りすがりに見ているのに気がつく。
公子「やめてくださいます?」
注目を集めたくないと差し出された手を取り、眉間にシワを寄せエスコートされ車に乗る公子。
○車内
公子「お仕事はどうされたんですか?」
真紘「スケジュールを調整して、少し早めに上がらせてもらいました」
車を運転する真紘。
真紘「結婚のご挨拶をしたい方がいるので、お付き合いいただけますか?」
公子「いったい、どなたにです?」
真紘「公子さんのご両親です――」
真っ直ぐに前を見つめたまま、真紘は言う。
○墓地(夕方)
蓬莱家の墓の前にしゃがみ込み、お線香をあげている真紘。
墓には真紘が用意した花も飾られている。
公子は手を合わせる真紘の真後ろで両手を握りしめてその姿を見ている。
泣きそうな怒っているような公子の表情。
公子「私の両親に、よく顔向けが出来ますね」
公子の言葉に、不思議そうに真紘が振り返る。
公子「お祖父様と共謀して結婚しておいて……」
震える手に、怒りを露わにするが公子の目には涙が滲んでいる。
真紘「公子さん?」
公子の様子に腰を浮かした真紘が手を伸ばしたが、それを払いのける公子。
公子「亡きご両親も大切に思ってますよアピールですか?」
「そんなので私が絆されるとでも?」
ボロボロと公子の目から涙が溢れる。
公子「なんの意味もないですよ」
「こんな場所に、なんの意味もない。死ねば人間、そこで終わりです」
涙を流しながらも、真紘を真っ直ぐ見ている。
公子「パパもママも、ここにはいません。もうどこにもいないんです!」
「なんでここに私を連れてきたんですか!」
その目が閉じられ、悲鳴のような声を上げる公子。
手で目を押さえ、奥歯を噛み締め、泣くのをこらえようとする公子。
それでも涙は止まらず、過呼吸ぎみになってくる。
立ち上がり、公子の肩に触れようとする真紘。
しかし、指一本触れるなという公子の言葉を思い出して、触れかけた手を握りしめて止まる。
真紘「後で毟っていただいて構いませんので、今だけはお許しください」
そう告げて、真紘の手が、公子の肩に触れる。
驚く公子。
ふわりと、真紘が公子を抱き上げお姫様抱っこをする。
驚いてバランスを崩さないように思わず真紘に抱きつく公子。
「泣かないでください、公子さん――貴女が泣くと、僕まで悲しくなる」
至近距離で見つめ合う二人。
公子の額に自分の額を寄せるようにして、哀しげな眼差しで真紘が言う。
驚きに目を丸くする公子の頬は濡れていたが、涙は止まっていた。