【シナリオ版】セーラー服を脱ぐ前に〜脅迫されて 溺愛されて〜【小説版連載開始につき更新停止しています】
第四話
○駐車場(夕方)
公子をお姫様抱っこで運ぶ真紘。
公子「おろしてっ……」
公子は抵抗して暴れようとするが、過呼吸を起こしているため上手く喋れず体にも力が入ってない。
真紘「とにかく、落ち着いてください」
駐車場の片隅にあるベンチまで来ると、公子を下ろし座らせる真紘。
真紘「ゆっくり息を吐いて――吐くことを意識して、深呼吸してください」
ハンカチで公子の涙を拭きながら、優しく声をかける真紘。
真紘に言われるがまま、呼吸を繰り返す公子。
公子(もう五年も経つのに)
公子の脳裏に、小六のとき白いシーツを被せられた両親と対面したシーンが思い起こされる。
公子(まだ、信じられない。受け入れられない)
(一時的にお祖父様のお世話になっているだけで、二人はまだどこかで生きている)
(また一緒に暮らせる日が来る――そんな気がしてしまう)
公子(でも、もう二人はいない)
(私の家族は、もうこの人になってしまった)
真紘を見つめる公子。
呼吸は落ち着いてきたが、まだ涙は止まらない。
真紘「すみません。公子さんの気持ちも考えず……軽率でした」
深々と頭を下げる真紘。
真紘「墓参りに行かれていないとは聞いてましたが……こういうことだとは思わず」
公子「こういうことって、どういうことです? 勝手に解釈して納得しないでください」
ハンカチで目元を押さえながら、さっきまで過呼吸を起こしていたとは思えない気丈さを振る舞う公子に、苦笑いする真紘。
真紘「それは失礼いたしました」
公子(茶番に付き合って罵ってやろうと思ったのに)
(こんな姿、誰にも見られたくなかったのに)
(来るんじゃなかった)
目が赤くはなをすすったりしているが、公子の涙は止まった。
公子「失態を見せました。忘れていただけるのなら、セクハラは不問にします」
真紘「ありがとうございます」
また深々と頭を下げる真紘。
真紘「ハゲにならずに済んでよかったです」
公子「次やったら、本当にむしりますからね」
○駐車場(少し薄暗くなってきた)
真紘「どうぞ」
公子「ありがとうございます」
自動販売機で飲み物を買ってきた真紘。
立ったまま公子に手渡すと、自分も缶コーヒーを手に隣に座る。
真紘「実は」
握りしめた缶コーヒーを見ながら、真紘がぽつりぽつりと自分の過去について語り出す。
真紘「僕も両親がいないんです。幼い頃に二人とも亡くなったので、祖父母が親代わりであまり寂しい思いはしてこなかったのですが……」
(回想)
○真紘の小学生三年生時代
芝生の上、レジャーシートの上で友達同士輪になって、グループごとにお弁当を広げている遠足にきた小学生たちの姿。
そこから少し離れた場所、一人でレジャーシートの上でお弁当を広げている小学生の真紘。この頃から眼鏡をかけている。
俯いてお弁当を食べていたが、人影が顔にかかり、顔を上げる。
見れば、体格のいいクラスメイトの男の子一人が仁王立ちで真紘を見ており、取り巻きも後ろに二人いる。
(真紘「まあ、よくある話です。人と違う家庭環境に目をつけられ、クラスで孤立していじめられる」
現在、思い出話を公子にしている真紘のカット。公子はきょとんとした顔で聞いている。)
突き飛ばされ、芝生の上に倒れ込む真紘。
体格のいいクラスメイトがお弁当を取り上げて笑っている。
クラスメイト「本田の弁当ダッセー! なんだよこの真っ茶色!」
囃し立てるように取り巻きが手を叩いて笑っている。
真紘は無言で立ち上がり取り返そうとするが、高く掲げられジャンプしても届かない。
(現在のカット
真紘「話は変わりますが、活字中毒でしてね。児童書などの本はもちろんのこと」
「醤油の原材料表とかまで、とにかく活字があれば読むのが癖でして」
缶コーヒーを開けて口にする真紘。
真紘「その頃の愛読書は、裁判官だった祖父の六法全書だったんですよ」)
再び突き飛ばされ、尻もちをつく真紘。
俯いたままゆっくり立ち上がる真紘。
表情は影になっていて見えない。
真紘「刑法235条――」
顔を上げた真紘は目に涙を溜めながら、泣かないようにこらえている。
真紘「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するっ!」
突然意味のわからないことを叫び出した真紘に、クラスメイトと取り巻きはきょとんとしている。
すぐに真紘が反抗しているのに気付き、顔を赤くして怒る。
クラスメイト「なに意味わかんねえこと言ってんだよ! 気持ち悪いヤツ!」
真紘「刑法第230条。公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処するっ!」
真紘は条文を叫びながらクラスメイトを睨みつけている。
たじろぐクラスメイト。
なにも言い返せなくなり、真紘のお弁当を投げ捨てようと振りかぶる。
真紘「第261条。前三条、第258条、第259条、第260条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処するっ!」
「おまえは今、窃盗罪、名誉毀損、器物破損等の罪をおかそうとしている! 全部で懲役16年、罰金なら130万だ!」
青ざめるクラスメイト。取り巻きもオロオロしている。
真紘はじっと睨みつけている。
教師「おまえら、なに騒いでるんだ!」
そうこうしているうちに、騒ぎに気付いた教師が走ってくる。
(回想終わり)
○駐車場(少し薄暗くなってきている)
真紘「小学生は刑法で罰せられませんし、懲役もそのまま合算されるわけではありません」
「恥ずかしいばかりの付け焼き刃の知識でしたが十分効果はあったようで、直接的ないじめは収まりました」
缶コーヒーを飲み終わり、ベンチに置く真紘。
公子ももう飲み終わって、同様にしている。
真紘「法律に助けられたと、そこからすっかりはまりましてね。祖父の書斎の本を読み漁り、大学受験の前の記念受験で合格しました」
「一時は持て囃されましたが、二十歳過ぎればただの人と言うように、今ではしがない雇われ弁護士です」
真紘は公子に微笑みかけるが、公子は不思議そうな顔をしている。
公子「まあ、確かに法律を並べ立てるのは効果あるかもしれませんね。以前、同じようなことをして不審者を撃退してる方を見たことがあります」
真紘の昔語りにフリーズしたまま感想を述べる公子。
公子「でも……すみません。私はいったい、なんの話を聞かされているんですか?」
なぜ真紘が急に昔話をしだしたのかわからず、公子は混乱している。
真紘「失態と気にされていたので、お返しに僕の恥ずかしい話をお話ししたまでです。これで、お互い様でしょう?」
にっこりと笑う真紘に、公子は吹き出す。
公子「あははっ! そんなこと考えてらしたんですか。本当に、なんでこんな話聞かされてるのかと思って」
声をあげて笑う公子に、幸せそうに真紘は目を細める。
真紘「やっと、笑ってくれましたね」
社長室で会ってからずっと、公子は真紘に笑顔を見せていなかった。
真紘「社長もああいう方ですし、ご両親が亡くなられてからは心休まるとこも少なかったと思います」
膝の上に肘を置き、軽く指を合わせてその手を見ながら真紘は話はじめる。
真紘「それでもせっかくご縁があって一緒になったんです。僕は公子さんの支えになりたい。弱いところだって見せれる相手になりたいんです」
合わせた手を自分の顔に近づけ、祈るような仕草になる。
真紘「卑劣なことをしたと思ってます。それでも僕は公子さんの側にいたかった。僕は、貴女のことを――!」
話すたびにどんどん顔が赤くなっていく真紘。
意を決して公子の方を向くが、公子の様子を見て赤くなっていた顔も平素に戻る。
真紘「公子さん?」
真紘が一世一代の告白をしているにも関わらず、公子は明後日の方向を見ており聞いていない。
そのまま遠くを見つめ視線を逸らさず、ゆっくりと立ち上がる。
真紘「公子さん!?」
真紘が手を伸ばすが、公子はそのまま走って行ってしまった。
公子をお姫様抱っこで運ぶ真紘。
公子「おろしてっ……」
公子は抵抗して暴れようとするが、過呼吸を起こしているため上手く喋れず体にも力が入ってない。
真紘「とにかく、落ち着いてください」
駐車場の片隅にあるベンチまで来ると、公子を下ろし座らせる真紘。
真紘「ゆっくり息を吐いて――吐くことを意識して、深呼吸してください」
ハンカチで公子の涙を拭きながら、優しく声をかける真紘。
真紘に言われるがまま、呼吸を繰り返す公子。
公子(もう五年も経つのに)
公子の脳裏に、小六のとき白いシーツを被せられた両親と対面したシーンが思い起こされる。
公子(まだ、信じられない。受け入れられない)
(一時的にお祖父様のお世話になっているだけで、二人はまだどこかで生きている)
(また一緒に暮らせる日が来る――そんな気がしてしまう)
公子(でも、もう二人はいない)
(私の家族は、もうこの人になってしまった)
真紘を見つめる公子。
呼吸は落ち着いてきたが、まだ涙は止まらない。
真紘「すみません。公子さんの気持ちも考えず……軽率でした」
深々と頭を下げる真紘。
真紘「墓参りに行かれていないとは聞いてましたが……こういうことだとは思わず」
公子「こういうことって、どういうことです? 勝手に解釈して納得しないでください」
ハンカチで目元を押さえながら、さっきまで過呼吸を起こしていたとは思えない気丈さを振る舞う公子に、苦笑いする真紘。
真紘「それは失礼いたしました」
公子(茶番に付き合って罵ってやろうと思ったのに)
(こんな姿、誰にも見られたくなかったのに)
(来るんじゃなかった)
目が赤くはなをすすったりしているが、公子の涙は止まった。
公子「失態を見せました。忘れていただけるのなら、セクハラは不問にします」
真紘「ありがとうございます」
また深々と頭を下げる真紘。
真紘「ハゲにならずに済んでよかったです」
公子「次やったら、本当にむしりますからね」
○駐車場(少し薄暗くなってきた)
真紘「どうぞ」
公子「ありがとうございます」
自動販売機で飲み物を買ってきた真紘。
立ったまま公子に手渡すと、自分も缶コーヒーを手に隣に座る。
真紘「実は」
握りしめた缶コーヒーを見ながら、真紘がぽつりぽつりと自分の過去について語り出す。
真紘「僕も両親がいないんです。幼い頃に二人とも亡くなったので、祖父母が親代わりであまり寂しい思いはしてこなかったのですが……」
(回想)
○真紘の小学生三年生時代
芝生の上、レジャーシートの上で友達同士輪になって、グループごとにお弁当を広げている遠足にきた小学生たちの姿。
そこから少し離れた場所、一人でレジャーシートの上でお弁当を広げている小学生の真紘。この頃から眼鏡をかけている。
俯いてお弁当を食べていたが、人影が顔にかかり、顔を上げる。
見れば、体格のいいクラスメイトの男の子一人が仁王立ちで真紘を見ており、取り巻きも後ろに二人いる。
(真紘「まあ、よくある話です。人と違う家庭環境に目をつけられ、クラスで孤立していじめられる」
現在、思い出話を公子にしている真紘のカット。公子はきょとんとした顔で聞いている。)
突き飛ばされ、芝生の上に倒れ込む真紘。
体格のいいクラスメイトがお弁当を取り上げて笑っている。
クラスメイト「本田の弁当ダッセー! なんだよこの真っ茶色!」
囃し立てるように取り巻きが手を叩いて笑っている。
真紘は無言で立ち上がり取り返そうとするが、高く掲げられジャンプしても届かない。
(現在のカット
真紘「話は変わりますが、活字中毒でしてね。児童書などの本はもちろんのこと」
「醤油の原材料表とかまで、とにかく活字があれば読むのが癖でして」
缶コーヒーを開けて口にする真紘。
真紘「その頃の愛読書は、裁判官だった祖父の六法全書だったんですよ」)
再び突き飛ばされ、尻もちをつく真紘。
俯いたままゆっくり立ち上がる真紘。
表情は影になっていて見えない。
真紘「刑法235条――」
顔を上げた真紘は目に涙を溜めながら、泣かないようにこらえている。
真紘「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するっ!」
突然意味のわからないことを叫び出した真紘に、クラスメイトと取り巻きはきょとんとしている。
すぐに真紘が反抗しているのに気付き、顔を赤くして怒る。
クラスメイト「なに意味わかんねえこと言ってんだよ! 気持ち悪いヤツ!」
真紘「刑法第230条。公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処するっ!」
真紘は条文を叫びながらクラスメイトを睨みつけている。
たじろぐクラスメイト。
なにも言い返せなくなり、真紘のお弁当を投げ捨てようと振りかぶる。
真紘「第261条。前三条、第258条、第259条、第260条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処するっ!」
「おまえは今、窃盗罪、名誉毀損、器物破損等の罪をおかそうとしている! 全部で懲役16年、罰金なら130万だ!」
青ざめるクラスメイト。取り巻きもオロオロしている。
真紘はじっと睨みつけている。
教師「おまえら、なに騒いでるんだ!」
そうこうしているうちに、騒ぎに気付いた教師が走ってくる。
(回想終わり)
○駐車場(少し薄暗くなってきている)
真紘「小学生は刑法で罰せられませんし、懲役もそのまま合算されるわけではありません」
「恥ずかしいばかりの付け焼き刃の知識でしたが十分効果はあったようで、直接的ないじめは収まりました」
缶コーヒーを飲み終わり、ベンチに置く真紘。
公子ももう飲み終わって、同様にしている。
真紘「法律に助けられたと、そこからすっかりはまりましてね。祖父の書斎の本を読み漁り、大学受験の前の記念受験で合格しました」
「一時は持て囃されましたが、二十歳過ぎればただの人と言うように、今ではしがない雇われ弁護士です」
真紘は公子に微笑みかけるが、公子は不思議そうな顔をしている。
公子「まあ、確かに法律を並べ立てるのは効果あるかもしれませんね。以前、同じようなことをして不審者を撃退してる方を見たことがあります」
真紘の昔語りにフリーズしたまま感想を述べる公子。
公子「でも……すみません。私はいったい、なんの話を聞かされているんですか?」
なぜ真紘が急に昔話をしだしたのかわからず、公子は混乱している。
真紘「失態と気にされていたので、お返しに僕の恥ずかしい話をお話ししたまでです。これで、お互い様でしょう?」
にっこりと笑う真紘に、公子は吹き出す。
公子「あははっ! そんなこと考えてらしたんですか。本当に、なんでこんな話聞かされてるのかと思って」
声をあげて笑う公子に、幸せそうに真紘は目を細める。
真紘「やっと、笑ってくれましたね」
社長室で会ってからずっと、公子は真紘に笑顔を見せていなかった。
真紘「社長もああいう方ですし、ご両親が亡くなられてからは心休まるとこも少なかったと思います」
膝の上に肘を置き、軽く指を合わせてその手を見ながら真紘は話はじめる。
真紘「それでもせっかくご縁があって一緒になったんです。僕は公子さんの支えになりたい。弱いところだって見せれる相手になりたいんです」
合わせた手を自分の顔に近づけ、祈るような仕草になる。
真紘「卑劣なことをしたと思ってます。それでも僕は公子さんの側にいたかった。僕は、貴女のことを――!」
話すたびにどんどん顔が赤くなっていく真紘。
意を決して公子の方を向くが、公子の様子を見て赤くなっていた顔も平素に戻る。
真紘「公子さん?」
真紘が一世一代の告白をしているにも関わらず、公子は明後日の方向を見ており聞いていない。
そのまま遠くを見つめ視線を逸らさず、ゆっくりと立ち上がる。
真紘「公子さん!?」
真紘が手を伸ばすが、公子はそのまま走って行ってしまった。