ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編
「チャコ、こっちおいで?」


 言われた通りにジャンのそばに寄るとぐいっと腕を引っ張られてそのままジャンの腕の中に閉じ込められてしまった。


「捕まえた」
「ジャン、これは恥ずかしいよ……」


 普段とは違って、少し生々しい接触に身体がこわばってしまう。


「なんで? 家でもいつも抱きしめてるだろ?」
「そうだけど。だって今は……」


 ジャンの腕が背中に回っていて、直接素肌に触れている。結婚はしたものの、直接的な接触はまだしたことがなくて、チャコは初めての感触に頭が沸騰しそうだった。


「素肌が触れあってるもんな」
「もうだからっ!」
「ははっ。そんな怒んなよ。俺は肌が触れあうのすごく気持ちいいけどな。チャコは気持ちよくない?」
「えぇ? だって恥ずかしいもん……」


 ドキドキのほうが上回っていて、冷静に分析なんてできない。


「今は恥ずかしいのは置いといてさ、肌が触れあってると、ドキドキもするけど、なんかちょっと安心しねぇ?」


 そのままジャンがチャコの様子を窺うように黙り込んだから、チャコも頑張って感じ取ってみた。やはり刺激が強くてドキドキとするが、でも触れているところを意識してみれば、確かに心地い感覚にも包まれてくる。とても不思議な感覚だ。


「……する、かも」
「だろ? あー、マジで幸せだわ」
「……うん、私も幸せ」


 チャコはなんだかジャンに甘えたくなってしまって、しまいには自分からジャンの背に腕を回して抱きついた。そのまましばらくの間、心地いい感触に浸ってみる。チャコはなんだか奥底から満たされていくようなそんな感覚にとらわれた。
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