ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編
「たけるくん? 大きくなったねー」


 チャコの姿はあのころとほとんど変わっていない。笑顔がよく似合うとてもかわいい印象の女性だ。


「お久しぶりです」


 その一言がとても恥ずかしかった。あの当時はもっとフランクな話し方をしていたと思う。でも、上下関係を意識するような年齢になった今、あのころみたいな話し方はできなかった。ただ、幼いころの自分を知る人に、そういう態度を取るのは、少し大人びてみせているようで、どうしても恥ずかしい気持ちが消せなかった。


「今、何年生なの?」
「中学一年です」
「え、もう!? 早いねー。てか、そんなかしこまらなくていいのに」
「いや……」


 そうは言われても、やはり昔のように接するのは難しい。たけるが恐縮して頭を下げていれば、チャコの隣にいたジャンが挨拶をしてくれた。


「初めまして。今はジャンとだけ名乗っておこうかな」
「初めまして。中堂たけるです。あの今日はありがとうございます」


 あまりにきれいな顔立ちだから緊張してしまう。それに、今のたけるはジャンにも強い憧れの気持ちを持っているから、なんだか神様を前にしているようで落ち着かない。


「いや、気にしなくていいよ。チャコも会いたがってたからね」
「……嬉しいです。ありがとうございます。あの、返事くれて本当に嬉しかったです」
「私も手紙嬉しかったよ! あのころのたけるくん思いだして懐かしくなっちゃった」


 チャコのその言葉に、たけるは何とも言えない笑みを浮かべた。彼女の歌やギターはよく覚えているのに、自分がどういうやりとりをしていたのかはほとんど覚えていなくて、懐かしんでくれるチャコにちょっとだけ申し訳ない気持ちになったのだ。


「あー、はは。僕は、チャコさんの歌ってる姿は覚えてるのに、自分がどんなだったかはよく覚えてなくて……生意気ばかり言ってたんじゃないかなって……」
「そんなことないよ。たけるくんすっごくかわいかったよ!」
「え!? あ、ありがとうございます」


 かわいいだなんて言われては、恥ずかしくも嬉しい気持ちになる。悪い印象を与えていなくてよかったとほっと息をついていれば、なんだか目の前にいる人物の空気が急に変わったように感じた。
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