ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編
 一時間も経つとたけるは随分と緊張も解けた。だからなのか、それとも最初に水分ばかり取ってしまったせいか、急に催してしまった。


「すみません、ちょっとお手洗い行ってきます」


 二人に断りを入れて席を立つ。一人になると急に現実感が湧いてきて、たけるは今更そわそわとしてしまった。なんだか落ち着かなくて、さっさと用を足すと急いで二人のいる場所まで戻った。


(えっ!?)


 個室の引き戸をゆっくり開けようとしたら、とんでもないものが目に入ってきた。ジャンがチャコに覆いかぶさるようにしてキスをしていたのだ。たけるは慌てて引き戸を戻して身を隠した。


「もうジャン! こんなとこでやめてよ。恥ずかしい」
「お前が妬かせるからだろ。いいやつだと思うし、今後も付きあい続けるのは構わないんだけど、その分チャコ補給しないと身が持たねぇ」
「……もう、何それ」
「もう一回だけ」


 姿は見えないが、その台詞から二人がまたキスをしているのだと容易に想像できる。


「ん。ありがとう。チャコ、好きだよ」
「私も大好き」


 仲がいいのはいいことだが、中学生の自分には刺激が強すぎる。勘弁してくれと言いたくなった。

 たけるは火照ってしまった頬を冷ますようにパタパタと手で顔を扇ぐと、二人には聞こえないようにふぅーと息を吐きだしてから、個室の中へと戻った。

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