ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編
「はあー。チャコのほうがすごいこと言ってるからな? たぶん、今俺の心臓のほうが大変なことになってるぞ」
「え?」
「チャコがかわいいことばっかり言うから。俺もドキドキして苦しい。でも、嬉しい」


 そう、ジャンはチャコがこの苦しい感覚を与えてくれることが嬉しいのだ。好きな人と心を通わせているからこそ得られるものなのだから。


「……うん。ジャンがドキドキしてくれるの嬉しい」
「俺もチャコがドキドキしてくれたら嬉しいよ」
「そっか……でも、できればお家だけがいい」


 チャコはもう恥ずかしさを振り切ったようだ。すっかり甘い顔になっている。


「まあ、今の表情になるより前には止めてやるよ。今、すげー色っぽい顔になってる。さすがにこれは誰にも見せらんねぇ」
「っ。やっぱりいじわる……」
「チャコ。俺には見せて?」


 顔を俯けてしまったチャコに、顔を上げるよう催促すると、そこには瞳を潤ませ、ジャンが欲しくてたまらないという顔をしたチャコがいた。


「……早くお家帰りたい。ジャンのせいで好きが止まらなくなっちゃった。ジャン、好き。好きなの。早く帰ってぎゅってしてほしい」


 どうやらチャコはイチャイチャモードのスイッチが入ってしまったらしい。すっかり蕩けた顔をして、ジャンのことを真っ直ぐ見つめてくる。普段は名前呼びがそのスイッチなのだが、ジャンが甘いことばかり言うから、うっかり入ってしまったらしい。


(さすがにヤバい……やりすぎた……まったく、チャコは素でこれをやっちまうからな。どう考えても俺のほうが翻弄されてるだろ……)


「ごめん、スイッチ入っちゃったな。もうちょっとだけ我慢して? 今日はこのあと何もないし、もうすぐ帰れるから。帰ったらいっぱい触れ合おう?」


 チャコはずっと甘い表情をしている。結局、家に帰って満足いくまで触れ合うまで、その表情は元に戻らなかった。

 チャコのその無防備な表情を外で晒すのは危険すぎるから、外での愛の囁きはほどほどにすべきかと反省したジャンだった。
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