ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編
「じゃあ、合図決めようか。きっかけがあったほうが入りやすいだろ」
「合図?」


 何の合図だと疑問に思ったが、ジャンはそれに答えてくれず、全然関係ないことを口にした。


「千夜子。俺の名前呼んで?」
「え? ……悠輝?」


 突然脈略のないことを言われて戸惑いつつも、チャコはジャンの名前を呼んでみた。


「うん。千夜子、もう一回」
「……悠輝」


 なんだか名前で呼ぶとくすぐったい気持ちになってくる。


「名前で呼び合うとなんか触れたくなんねぇ?」
「……なる、かも?」
「だろ? だから、これが合図。触れ合おうの合図」
「触れ合おうの合図……?」


 ちゃんと合図に繋がっていることだったらしい。だが、合図の意味はわかっても、チャコにはまだそれがどんなものかピンとこない。首を傾げていれば、ジャンにくすっと笑われた。


「イチャイチャしようってことだよ。嫌なときは名前呼ばなくていいから。でも、お互いに名前で呼んだときは、触れ合いたいって気持ちをできるだけ優先する。どう?」
「うーん、まだわかんない……でも、やってみる」
「千夜子、ありがとう。嬉しい」


 そんなふうに嬉しそうな表情を浮かべられたら、チャコも頑張りたい気持ちが沸々と湧いてくる。その気持ちを込めてジャンを見つめたら、真剣な顔で見つめ返された。

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