ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編
『結婚騒動のあと』
安達家には、まるで嵐が去ったあとのような静けさが訪れていた。今はリビングに父と母の二人だけで座っている。その静かな空間に、父の大きなため息が響いた。
「ふふっ。お疲れ様です」
「ああ。本当に疲れたな……千夜子はどうしてああ驚くことばかりするんだろうな。今日ので寿命が十年は縮んだぞ」
「まあ、今回ばかりは千夜子だけのせいじゃなさそうだけれど」
「……そうだな」
千夜子が連れてきた江川悠輝という男は認めるまで決して動かないというような強い意志で目の前に座っていた。おそらく彼主導で結婚の話を進めたのだろう。
「あなたがあそこまで認めるだなんてちょっと驚きだったわ」
「あれはなー、認めざるを得んかっただろう……」
千夜子の様子にも、彼の気迫にも、大きな愛を感じてしまって、まったく認めないというわけにはいかなかった。
「いつまでも子供だと思ってたのにな。あんな表情するようになるとは思わなかった……」
「そうね。溢れ出てたものね」
千夜子は彼が何か語るたびに、嬉しそうに頬を染めていた。好きで好きでたまらないのだとその表情が物語っていた。恋なんてまるで知らなさそうな我が子のあんな姿を見ては、二人の仲を応援せずにはいられなかった。
「きっと彼だろう。千夜子が歌っていたのは」
千夜子が自身で作った曲は誰かに向けたものだろうとは思っていた。でなければ、あの子があんな歌詞を書くとは思えない。
「そうね、おそらく。きっとあのとき落ち込んでいたもの彼が原因でしょう」
「そうだな。四年前っていったらそうだもんな……」
千夜子が歌の道に進みたいと言いだした直後、彼女は目に見えて元気をなくしていた。夢だけは絶対に諦めないと気負ってはいたが、何かがあったことは明白だった。どうしたのかと聞いてみても、何でもないというばかりで原因はわからなかったが、今日の話を考えれば自ずとそれが原因だとわかった。二人が離れてしまったことが原因だったのだろうと。
「そんなに長い間、想い合っていただなんてな……」
「余程好きなのね。互いに」
「ああ。彼の目には迷いが一切なかったからなー。あんな目で見られたら、折れざるを得んかった」
本当に強い瞳だった。千夜子を愛しているのだと強く伝わってきた。彼は覚悟を決めてここに座っているのだとわかった。若いからという理由だけで認めないわけにはいかなかった。
「きっと大丈夫よ。私の直感がそう言ってるもの」
「はは。母さんはそればかりだからな。でも、一番信頼できる」
妻の直感は本当によく当たる。これまでに何度も経験しているから間違いないだろう。それに今回ばかりは自分も同じだったから、それが外れるわけないと思えた。
「三ヶ月後にはきっと結婚も許してしまうんだろうな……」
リビングにはもう一度父の大きなため息が響いた。
「ふふっ。お疲れ様です」
「ああ。本当に疲れたな……千夜子はどうしてああ驚くことばかりするんだろうな。今日ので寿命が十年は縮んだぞ」
「まあ、今回ばかりは千夜子だけのせいじゃなさそうだけれど」
「……そうだな」
千夜子が連れてきた江川悠輝という男は認めるまで決して動かないというような強い意志で目の前に座っていた。おそらく彼主導で結婚の話を進めたのだろう。
「あなたがあそこまで認めるだなんてちょっと驚きだったわ」
「あれはなー、認めざるを得んかっただろう……」
千夜子の様子にも、彼の気迫にも、大きな愛を感じてしまって、まったく認めないというわけにはいかなかった。
「いつまでも子供だと思ってたのにな。あんな表情するようになるとは思わなかった……」
「そうね。溢れ出てたものね」
千夜子は彼が何か語るたびに、嬉しそうに頬を染めていた。好きで好きでたまらないのだとその表情が物語っていた。恋なんてまるで知らなさそうな我が子のあんな姿を見ては、二人の仲を応援せずにはいられなかった。
「きっと彼だろう。千夜子が歌っていたのは」
千夜子が自身で作った曲は誰かに向けたものだろうとは思っていた。でなければ、あの子があんな歌詞を書くとは思えない。
「そうね、おそらく。きっとあのとき落ち込んでいたもの彼が原因でしょう」
「そうだな。四年前っていったらそうだもんな……」
千夜子が歌の道に進みたいと言いだした直後、彼女は目に見えて元気をなくしていた。夢だけは絶対に諦めないと気負ってはいたが、何かがあったことは明白だった。どうしたのかと聞いてみても、何でもないというばかりで原因はわからなかったが、今日の話を考えれば自ずとそれが原因だとわかった。二人が離れてしまったことが原因だったのだろうと。
「そんなに長い間、想い合っていただなんてな……」
「余程好きなのね。互いに」
「ああ。彼の目には迷いが一切なかったからなー。あんな目で見られたら、折れざるを得んかった」
本当に強い瞳だった。千夜子を愛しているのだと強く伝わってきた。彼は覚悟を決めてここに座っているのだとわかった。若いからという理由だけで認めないわけにはいかなかった。
「きっと大丈夫よ。私の直感がそう言ってるもの」
「はは。母さんはそればかりだからな。でも、一番信頼できる」
妻の直感は本当によく当たる。これまでに何度も経験しているから間違いないだろう。それに今回ばかりは自分も同じだったから、それが外れるわけないと思えた。
「三ヶ月後にはきっと結婚も許してしまうんだろうな……」
リビングにはもう一度父の大きなため息が響いた。