ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編
「チャコ、まだかー?」


 ジャンはさっさと水着に着替えてプールサイドでチャコを待っている。チャコももう着替え終わってはいるのだが、ジャンにその姿を見せるのが恥ずかしくてなかなか出ていけない。


「チャコ?」


 心配になったのか様子を見にきたジャンにおいでおいでと手招きされたから、チャコは意を決して、体に巻き付けていたタオルを外してジャンのそばへと歩み寄った。


「……かわいい。すげー、かわいい。チャコによく似合ってるな」


 べた褒めするジャンに、チャコは恥ずかしくて、でも嬉しい気持ちになる。だが、ちょっとだけ不安もあった。


「本当に?」
「本当だよ」
「楽しみにしてるって言われたから、頑張りたかったけど、ビキニは無理だった。ごめんね?」


 チャコが今着ている水着はワンピースタイプのものだ。水着の中では比較的露出が少ない。それでも背中は結構大胆に開いており、チャコにしてはかなり攻めたデザインのものを選んでいた。けれど、ジャンの期待に応えられなくて、残念がられてしまわないかと心配だった。


「なんで謝るんだよ? それも俺のこと考えて選んでくれたんだろ? ちゃんと嬉しいから。本当に似合ってるよ」


 本当に心から喜んでくれているようだ。不安な気持ちが薄らいでいく。


「……うん。ありがとう」
「かわいすぎて俺の腕の中に閉じ込めてしまいたいくらいだから、そんな心配すんな」


 またストレートな言葉でチャコを攻めてくる。ドキドキする自分の心臓をどうにかしたくて、チャコはつい文句を言ってしまう。


「っ。もう! だからそういう恥ずかしいこと言わないでってば」
「んなこと言われても正直な感想だからな」
「もう、ジャンのいじわる」


 ジャンは随分と楽しそうだ。そんなジャンをもっと喜ばせたくなる。だから、チャコは意を決してそれを打ち明けた。


「……あのね、実は後ろだけちょっと頑張ったんだ……」
「……見せて?」


 ジャンから期待のまなざしが送られてくる。恥ずかしくてたまらないが、チャコはゆっくりとジャンのほうへ背を向けてみた。


「あー、マジか。ヤバいな、これ。ムラムラくるわ」
「もうっ!」
「すげー、嬉しい。ありがとな、チャコ」


 ジャンは嬉しそうな顔をして、チャコにチュッと口づけてきた。ジャンが大層喜んでいるのがわかって、頑張ってみてよかったなと思う。次の機会にはもう少しだけ頑張ってもいいかななんて、そんなことまで考えてしまった。

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