darkness


私が生きていることだけで、陸はこんなに美しい涙を流してくれる。


知らなかったよ。

私はもう忘れてた。
ずっと思い出すことができなかった。

人の命を感じ、泣くということを。





私は、心の中で何度も陸に謝った。





温かい陸の手から

陸がどれほど私を思ってくれているかが伝わってきた。








「あさ美、辛かったな………。だけどな、死ぬなんてこと考えるな!
あさ美のおばさんが死んだ時…あさ美悲しかっただろ?辛かっただろ?苦しかっただろ?
お前が死ぬってことはそれを…俺に味わえって言ってんのと同じだからな!!」



私はただ陸を見つめ、その言葉を噛み締めるしかなかった。




「あさ美……………活きろ。」





同時に陸の目からは大粒の涙が落ちた。





“活きろ”


陸が言ったその一言は


私が私を貫くことを意味していた。




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