darkness
陸がカウンターに近寄り、
裕平くんとの間に私を挟んだように座る。
「おばさん俺、紅茶。あさ美は何か飲まないの?」
陸に言われ、
私は特に飲みたいわけでもないけどミルクティーを頼んだ。
変に緊張して落ち着かなかった。
陸が無理に平気な顔をしているのがわかったから。
「怪我、もう良くなった?」
裕平くんが隣に座る私に問う。
『うん、もうだいぶ良くなった。裕平くんも元気そうだね。』
「うん………。」
何か思い込んだように下を向く裕平くん。
陸も不思議に思ったのだろう。口を開く。
「なんかあったんすか?」
すると裕平くんは私2人を見て
「実は明日引っ越すんだ。」
『引っ越す?』
「家を出て、一人でやっていこうと思って…。」
『一人でって…………一人暮らしってことですよね?』
陸にも私にも詳しいことがわからず
首をかしげた。
カウンターの向こうにいる綾子おばさんは
全てを知っているようだった。