白い菫が紫色に染まる時
雪が少し降り始めていた。葬式中に降らなくて良かった。

傘を刺すほどの雪の量ではないので、傘を持たずにスーパーへ向かった。
温かくてすぐにできるものが良いと考えて、私はうどんを買うことにした。
それだけだと寂しいのでかまぼこや天ぷら、野菜も買う。
買い物はすぐに終わり、早速家に戻ろうとスーパーを出ると、スーパーの前の道にある自販機の前に見覚えのある人影が見えた。

「白澄?」

そう呼びかけて、振り返った彼は片手にお汁粉を持っていた。

「さっきは来てくれてありがとう」

先ほどの葬式に彼も来ていたが、その時は話す時間はなく目を合わせてお辞儀するだけだった。

「いや、菫の父親が死んだことを伝えたの俺だしな。菫も帰って来てると思ったし・・・・」

そして、彼は手に持っていたお汁粉を開けて、一口飲んだ。

「私も飲もうかな。それ」
「これ?やっぱり雪が降る日はお汁粉飲みたくなるよな。あれ、それを最初に言ったのって菫だったよな?」
「そうだよ。よく、覚えてるよね」

私も一個130円のお汁粉を自販機で買った。

「まあ、あの日から、この時期になるといつも飲んでるし・・・」
「そっか・・・」

そして、私たちは自然と同じ方向に向かって二人並んで歩き出した。
私の実家とチーズ工場はここから同じ方向にある。

「そういえば、白澄結婚したんだよね。おめでとう。急にハガキ送られてきて驚いたよ。もっと早く教えてくれればよかったのに」

ラインではお祝いしたが、直接言えていなかったので、改めてお祝いした。
そして、私はお汁粉を開けて、一口飲む。

「菫だって、俺が知らないうちに結婚してたじゃん。これでお相子だろ」

確かに。私は誰にも言わずに結婚してしまったので彼のことをとやかく言う権利はない。

「相手は、どんな子なの?」
「ああ・・。彼女に高校時代に告白されて、付き合えないって一度は断ったんだけど、それでも諦めずに思い続けてくれるような子」
「一途な子なんだね」          
「うん・・・」

風が先ほどより、強く吹き始めた。
心なしか、雪も少しだけ強く降っているように見える。

「寒っ」

思わず、そう言うと、彼はこれでも羽織っておけと先ほどまで彼の首元に巻かれていた白いマフラーを差し出された。
少し、躊躇ったが、その親切心を無下にすることもできず、私はその白いマフラーを受け取った。

「本当、相変わらず、寒がりだよな」
「白澄は寒くないの?」
「俺にとってはこの環境が当たり前だからな」
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