浅蘇芳─asakisuo─
「……あかりと、また、会えて。良かった」
この街で、再び会えて良かった。
「もう……森高君のこと、忘れないよ」
「もし、忘れても」
こそっと耳元で囁く森高君の声が嬉しくて、くすぐったくて、ふふっと笑うと、森高君も小さく笑う。
過去が分からなくても、出会ってからの思い出に溢れ、いつの間にか“酷く気にしていた感覚”が遠いものになってゆくのだろう。
というより、既にスピードを加速させながら遠退いている。