浅蘇芳─asakisuo─
──それなのに、ようやく二人眠りについた明け方、私は一瞬にして森高君と出会った雨の日に舞い戻っていた。
脳内と身体が切り離されていて、本心じゃないのに濡れながら森高君の前を通り過ぎてしまい、動悸が止まらない。
しかし、力が入り振り返れず濡れた前髪に手を当てながら歩いていると、パシャパシャ走る音が聞こえてきて、優しく腕を握られた。
「あかり?」
背後で名前を呼ばれた瞬間、面白いくらいスパンッと雫を弾き飛ばし、大雨の街から美しい海辺に景色が生まれ変わり振り返ると、にっこり笑う森高君が待っていた。
なんて素敵な笑顔なんだろう。
「あかり」
森高君は嬉しそうに私の名前を呼びながら、ひまわりの笑顔でキスをしてきた。