地味な私ですが、お日様みたいなヴァンパイアの花嫁になりました
プロローグ


やわらかい唇が離れて、光を感じる。

そっと目を開けると、木漏れ日の中で、綺麗な顔がやさしい微笑を浮かべていた。


お日様みたい。


光に溶け込むようなその笑顔を見て、思った。


「よし、午後の補給、完了」


はぁーと草の上に寝っ転がる慧(けい)くん。

美味しいものをお腹いっぱい食べたーって感じで、なんだかおかしい。

でも、キスする前の慧くん、げっそりしていて、もうお腹ペコペコって様子だった。

だから、実際にお腹が満足したのかもしれない。

不思議、だなぁ。


「どうしたの? そんな顔して」

「え、うん。なんか本当にお腹いっぱいになったんだなぁ、と思って」

「ん、なったよ」


慧くんはにっこり笑った。


「学食でたくさん昼食は食べて来たけれども、俺が満たしたいのは、それとはまた別だから」


慧くんは私の手を取って、自分の胸に当てた。


「俺たちは人間とちがって必要な栄養が多い。でも単純にお腹に入れるだけでいいってことじゃない。満たしたいのは、ここも、だから」


とくん、とくん。

慧くんの鼓動が伝わってくる。


お腹だけじゃなく、心も満たしたい、ってことなんだね。


私と慧くんは、ちがう。

でも、そう言われると、すとんとなにかが落ちてくる。

落ちてきて、その余韻が甘い幸せになって私の心も満たす。
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