血を飲んだら、即花嫁だなんて聞いてませんが?
第三話 純白の吸血鬼は、血が苦手
翌日の朝。
休日だけれど、きちんと制服を着て女子寮を出た。
男子寮との間には管理棟があって、そこには誰でも使える談話室がある。
そこが八雲くんとの待ち合わせ場所だ。
休日、そして朝早くとあって生徒は一人もいない。むしろ好都合だ。
学園一のイケメンと一緒にいるところを見られたら、何を言われるか。
……でもこれからパートナーになると思ったら、三年間好奇の目に晒されることになる。あぁ、胃が痛くなってきた。
キリキリする胃をさすりながらソファーに座り待っていると、八雲くんが談話室に入ってきた。
「おはよう、風花ちゃん」
「おはようございます」
朝が弱いのか、少し眠たげな雰囲気がなんとも色っぽい。
朝から、醸し出して良いオーラじゃないと思う。
「風花ちゃん?」
「いえっ、なんでもないです!」
「そう? じゃあ行こうか」
◆◆◆◆◆
八雲くんに連れられて来たのは、今は使われていない旧校舎だった。西洋を感じる校舎は、所々ひび割れていて壁を蔦が覆っている。
「こっちだよ、風花ちゃん」
おいでおいで、と手招きをされた方へ行けば、八雲くんは躊躇なく校舎の中に入っていくため慌てて後ろに続く。
「本当に、ここに真白恭也くんがいるんですか?」
「恭也はね、休日はよくここに入り浸ってるよ。あ、これは僕達だけの秘密ね?」
歩みを止めてふり返った八雲くんに、こくんと頷けば、再び前を向き歩きはじめた。
建物は木造建築ではないけれど、歩くたびにどこからかパキッと音がするのは正直に言って怖い。
でも先頭を八雲くんが行ってくれるおかげで、安心感があり、どうにか二階にたどり着くと一番奥の部屋を目指した。
「恭也? いるんでしょ」
扉があったであろう場所は何もなく、吹き抜けになってしまっている。
古びた机や椅子が、部屋の後ろの方に積み重なっているから、昔は教室として使われていたようだった。
教室の機能は失われているはずなのに、埃一つないのは、窓枠に腰掛けて本を読んでいる人物が掃除をしたからだろうか?