血を飲んだら、即花嫁だなんて聞いてませんが?

「はぁ? 僕が、いつ、風花ちゃんに愛想をつかされたって?」


 カツカツ、と靴音を鳴らし私に近づいた八雲くん。
 腰に手をまわされて、そのままの勢いで唇を塞がれた。


「んぐっ!?」


 中に割って入ろうと、ツンツンと八雲くんの舌が私の唇をノックする。


「──もう、お前だけのものではないぞ」


 肩をぐいっと引っ張られて、どうにか八雲くんの拘束から解かれた。
 助けてくれたのは真白くんだ。


「ありがとう、真白くん……へ?」


 お礼を言おうと振り向けば、その綺麗な顔が近づいてきていた。
 直前に分厚いレンズの眼鏡を外される。
 なんでそんな行動まで似ているのだ、二人は!


「んっ……!」


 間抜けにも口を開けていたため、するりと真白くんの舌が口内に入ってくる。


「……はぁ、やっぱり恭也に紹介するんじゃなかった。そのまま一人、退学になればよかったのに」


 憎まれ口をたたく八雲くん。
 真白くんは私から唇を離して、眼鏡を返してくれた。
 そして、あろう事かさらに八雲くんを煽るようなセリフをはく。


「……感謝してるぞ、郁人」

「うわ、本当最悪」


 八雲くんは、手に持っていた紙をひらりと私達に見せる。あれは、パートナー申請書だ。

 なぜかすでに、八雲くんの名前は記入されていた。
 取りに行く、というのは嘘で本当は予め用意していたんじゃ? と疑わずにはいられない。


「風花ちゃん、恭也。はやくこれに名前を書いて。終わったら、学園長室に提出しに行こう」

「郁人、ペンは?」

「あるよ」


 申請書を受け取った真白くんは、教卓の上で紙にさらさらと名前を書いていく。書き終わると、ペンを渡してくれた。
 私も名前を書いていく。
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