血を飲んだら、即花嫁だなんて聞いてませんが?
第五話 この判断は正しかったと……思いたい
本校舎の最上階にある、学園長室の前まで やって来た。
私は肩で息をしているのに、横に立っている二人は息一つ乱していない。
今度から、心の中では体力お化けと呼んでやる。
重厚感のある扉をノックし、中から「どうぞ」と声が聞こえ、私はごくりと唾を飲み込み扉を開けた。
広々とした学園長室。
背もたれのある椅子に座り、机に肘をついて私達を待っていたのは他でもない、この学校の学園長だ。
さらりと指通りが良さそうな黒髪をかきあげて、「いらっしゃい」と目を細める。
学園長先生は、恐ろしいほど顔が整っている。今気がついたけれど、八雲くんと雰囲気が似ている気がした。
「やぁ、辻村ちゃん。久しぶりだね」
「お久しぶりです、学園長先生」
「緊張しなくていいよ。座りなさい」
そう促されて、私達三人はソファーへと腰掛ける。
その際も、二人は私を挟むようにして座るのだから、逃げ場がないようで落ち着かない。というか、学園長室に入ってから二人は何故かおとなしい。
向かいのソファーに、学園長先生が腰を下ろした。
「パートナーの申請書を持ってきました」
申請書をテーブルに置けば、さっと目を通して頷いた学園長先生。
胸元のポケットからペンを取り出し、サインをしていく。
「……よし。これできみたちは、はれて正式なパートナーだ。退学にならなくてよかったね、三人とも」
ははっと笑う顔は、やはり八雲くんを思わせる。