血を飲んだら、即花嫁だなんて聞いてませんが?
「それにしても、よくこの二人を落としたねぇ辻村ちゃん」
「落としたというか、なんというか……」
むしろ私が捕まったというか。
学園長先生は、八雲くんと真白くんを順に見て、ふむと自分の顎を撫でる。
「純潔の稀血を持っているからじゃなく、きみ自身に惹かれたのだと私は思うけれど」
「おや。よくわかってますね、学園長」
「だろう?」
八雲くんがそう言えば、パチンとウィンクをした学園長先生。
「いやぁ、可愛い義娘が出来て私は嬉しいよ」
「…………え?」
なんで私が学園長先生の義理の娘になるの?
まさか……と、私は一つのことに気づく。
「学園長先生。もしかして、苗字は……」
「私の苗字かい? 覚えてないとは悲しいなぁ。『八雲』だよ。そこにいる郁人は、私の息子さ」
「──なんで言ってくれなかったんですか、八雲くん!」
八雲くんを見れば、「知ってるかと思ってたよ」と言われた。
「そんなっ。編入するために学園長先生に初めて会った時、名前を教えてもらってないし……」
「あれ? 三年前、きみが吸血鬼襲われそうになった時、名乗ったと思うけどなぁ」
ピシリと体が固まる。
ギギギ、と人形のように首を回し学園長先生を見る。
「いま、なんて言いました……?」