じれ恋
*
出発当日、空港まで紺炉を見送りに来た。
もちろん、みんな一緒に。
「要さん、浮気はほどほどに!」
犬飼が紺炉をからかうように言う。
「ふざけんな。何で俺が浮気する前提なんだよ」
「安心してください、お嬢は俺とイチャイチャするんで。ね?お嬢」
犬飼が肩を組んで私に同意を求めてきたから、私もそれにノッた。
「ねーっ!」と2人で顔を見合わせると、他のみんなが次々と紺炉のことを茶化した。
「おいおい俺の味方はいないのかよ!」
紺炉は笑いながら不満をたれた。
紺炉だけじゃなく、来月にはみんながそれぞれの道に進んでいく。
この賑やかさともお別れだ。
「お嬢。ちゃんと食べて、寝て。寝る時は腹に毛布かけるの忘れないように。お嬢はすぐお腹冷やすので」
紺炉が私に向き直り、真剣な表情で言った。
「はいはい」
「俺がいなくても、出かけてる時は親父にこまめに連絡をいれること!大学生だからってハメを外しすぎないように!男はみんな自分を狙う狼だと思うこと!」
「それは大袈裟だよ〜」
紺炉はお母さんでもありお父さんでもあり、お兄ちゃんみたいでもあるけどお姉ちゃんみたいでもあり。
時に友達みたいな、世話係だ。
でも、実際はもうそのどれでもなく、昔から変わらない〝私の好きな人〟
紺炉にぐっと腕を引かれ、おでことおでこが重なった。
紺炉がゆっくり目を閉じたから、私もそれに合わせる。
紺炉はおでこをくっつけたまま話し始めた。
「お嬢」
「ん?」
「・・・俺のこと、待っててくれますか?」
さっきの犬飼との話を、紺炉は意外と気にしているのかもしれない。
もしそうだとしたら、紺炉には悪いけどかなり嬉しい。
「もちろん!ちゃんとここで待ってるよ」
紺炉は安心したようにフッと笑った。
「・・・愛してる」
「うん、私も……」
私がそう返事をすると、紺炉は握っていた手を離し、ゲートの向こうへと進んで行った。
いってらっしゃい、紺炉——。
私は紺炉の背中が見えなくなっても、しばらくその場に立ち尽くしていた。
出発当日、空港まで紺炉を見送りに来た。
もちろん、みんな一緒に。
「要さん、浮気はほどほどに!」
犬飼が紺炉をからかうように言う。
「ふざけんな。何で俺が浮気する前提なんだよ」
「安心してください、お嬢は俺とイチャイチャするんで。ね?お嬢」
犬飼が肩を組んで私に同意を求めてきたから、私もそれにノッた。
「ねーっ!」と2人で顔を見合わせると、他のみんなが次々と紺炉のことを茶化した。
「おいおい俺の味方はいないのかよ!」
紺炉は笑いながら不満をたれた。
紺炉だけじゃなく、来月にはみんながそれぞれの道に進んでいく。
この賑やかさともお別れだ。
「お嬢。ちゃんと食べて、寝て。寝る時は腹に毛布かけるの忘れないように。お嬢はすぐお腹冷やすので」
紺炉が私に向き直り、真剣な表情で言った。
「はいはい」
「俺がいなくても、出かけてる時は親父にこまめに連絡をいれること!大学生だからってハメを外しすぎないように!男はみんな自分を狙う狼だと思うこと!」
「それは大袈裟だよ〜」
紺炉はお母さんでもありお父さんでもあり、お兄ちゃんみたいでもあるけどお姉ちゃんみたいでもあり。
時に友達みたいな、世話係だ。
でも、実際はもうそのどれでもなく、昔から変わらない〝私の好きな人〟
紺炉にぐっと腕を引かれ、おでことおでこが重なった。
紺炉がゆっくり目を閉じたから、私もそれに合わせる。
紺炉はおでこをくっつけたまま話し始めた。
「お嬢」
「ん?」
「・・・俺のこと、待っててくれますか?」
さっきの犬飼との話を、紺炉は意外と気にしているのかもしれない。
もしそうだとしたら、紺炉には悪いけどかなり嬉しい。
「もちろん!ちゃんとここで待ってるよ」
紺炉は安心したようにフッと笑った。
「・・・愛してる」
「うん、私も……」
私がそう返事をすると、紺炉は握っていた手を離し、ゲートの向こうへと進んで行った。
いってらっしゃい、紺炉——。
私は紺炉の背中が見えなくなっても、しばらくその場に立ち尽くしていた。