じれ恋
息がかかる距離まで近づいたところで、遠くから犬飼が紺炉を呼ぶ声が聞こえた。


「要さーーーん!」


私たちは我に返り、慌てて離れた。


危ない危ない。


ここにいるのは私たちだけではなかった。


「おー帰ったか要」


「ただいま戻りました、親父」


「紺炉さんおかえりなさい!」


「おーただいま!」


おじいちゃんに相模、犬飼たちが集まってくる。


こんなに人が揃うのは4年前の紺炉の見送り以来だ。
 

みんな紺炉が帰って来るのを楽しみにしていた。


きっとそれぞれ積もる話もあるだろうし、私は一旦そばを離れようとすると、紺炉に手首を掴まれ引き止められる。


紺炉はこちらを全く見ずにみんなと話を続けていた。


これはここにいろって意味なのかな?


私たちはみんなから見えないように、自分たちの後ろで手を繋ぎながらみんなと談笑した。 
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