じれ恋
Side 紺炉
22:30。
お嬢は同期と飲み会があると言って夕方頃に出かけて行ったきり、音沙汰はない。
もう社会人なのは分かっているが、俺の中のお嬢は18歳で時が止まっているから、どうしたって過保護になってしまう。
連絡するのはさすがにウザがられるだろうか?
メッセージくらいからいいだろうか?
俺がどうしようか悩んでいると、インターホンが鳴った。
モニターを見ると知らない男がお嬢を抱えて立っていた。
俺は急いで扉を開けた。
「あ、こんろぉ〜たらいま〜」
かろうじて人の顔を識別できるくらいには意識ははっきりしているようだったが、お嬢は支えがないと自分では立っていられないくらい酔っ払っていた。
正直そのままホテルに連れて行かれてもおかしくない状態のお嬢を、ちゃんと家まで送り届けてくれるあたりは及第点。
少なからず下心はあったかもしれないが、まともそうな同僚で安心した。
俺は連れ帰ってくれたお礼と謝罪をし、彼にタクシー代を握らせた。
お嬢が20歳を超えた時、俺は日本にいなかったからお嬢がお酒に強いのか弱いのか、酔ったらどうなるのか、そんなことは一切知らなかった。
今日だって、たくさん飲んでこの状態なのか、あるいは少しの酒でもこうなったのかは分からない。
歩かせてもフラフラして危なかったため、そのまま横抱きでお嬢の部屋まで連れて行った。
「これじゃあ風呂入るのも危ないし、今日はもう着替えて寝てくださいね」
本当は少し話をしたかったが、こうも酔っ払っていてはまともに会話はできなさそうだ。
明日に持ち越すことにして部屋を出ようとすると思いっきり腕を引かれ、お嬢に押し倒される形でベッドに倒れ込んだ。
お嬢の瞳に俺が映っているのが見える。きっと俺の目には、お嬢が写っているのが見えるのだろう。
しばらく視線が絡んだ後、お嬢はそのまま顔を近づけて来た。
何度も何度も互いの唇を啄みながら、お嬢は俺のベルトに手をかけた。
そこで俺は察した。
あぁ、きっとこの4年の間にお嬢は《《オトナ》》になったんだなと。
酔っているくせに、いくらなんでも手つきが慣れ過ぎている。
経験していないとこんなことにはならないだろう。
こうなることも予測はしていた。
離れていれば気持ちだって冷めてしまうし、人間は苦楽を共に過ごす身近な存在に惹かれるようにできている。
だからお嬢に大切なやつができてたって何も不思議じゃない。
しかし、こんな形で気づいてしまうのはなかなかメンタルを抉られる。
当の本人は、俺の首筋に唇を当てたまま完全に静止していた。
「スーーッスーーッ」
「・・・お嬢?」
反応はなかった。
なんとも気持ちよさそうに眠っている。無防備すぎるお姫様だ。
こんな姿を晒されると、俺のいなかった4年の間に何か変なことに巻き込まれたのではないかと心配になる。
お嬢を綺麗に寝かせ毛布をかける。
部屋の感じは4年前と変わっていない。
彼氏との写真とか、そういう男を匂わせる類の物も一切なかった。
「はぁぁ」
少し安心している自分がいた。
俺も自分の部屋に戻り、ベッドに寝転んで天井を見つめた。
やはりそろそろハッキリさせる必要がある。もしお嬢に誰か相手がいるのなら、俺は早急にこの家を出よう。
一緒にいるのは相手にも申し訳ないし、何より俺がしんどい。
「そうなると、あれもいらなくなるか……」
俺はクローゼットに仕舞ってある、小さな箱の存在を思い出した——。
22:30。
お嬢は同期と飲み会があると言って夕方頃に出かけて行ったきり、音沙汰はない。
もう社会人なのは分かっているが、俺の中のお嬢は18歳で時が止まっているから、どうしたって過保護になってしまう。
連絡するのはさすがにウザがられるだろうか?
メッセージくらいからいいだろうか?
俺がどうしようか悩んでいると、インターホンが鳴った。
モニターを見ると知らない男がお嬢を抱えて立っていた。
俺は急いで扉を開けた。
「あ、こんろぉ〜たらいま〜」
かろうじて人の顔を識別できるくらいには意識ははっきりしているようだったが、お嬢は支えがないと自分では立っていられないくらい酔っ払っていた。
正直そのままホテルに連れて行かれてもおかしくない状態のお嬢を、ちゃんと家まで送り届けてくれるあたりは及第点。
少なからず下心はあったかもしれないが、まともそうな同僚で安心した。
俺は連れ帰ってくれたお礼と謝罪をし、彼にタクシー代を握らせた。
お嬢が20歳を超えた時、俺は日本にいなかったからお嬢がお酒に強いのか弱いのか、酔ったらどうなるのか、そんなことは一切知らなかった。
今日だって、たくさん飲んでこの状態なのか、あるいは少しの酒でもこうなったのかは分からない。
歩かせてもフラフラして危なかったため、そのまま横抱きでお嬢の部屋まで連れて行った。
「これじゃあ風呂入るのも危ないし、今日はもう着替えて寝てくださいね」
本当は少し話をしたかったが、こうも酔っ払っていてはまともに会話はできなさそうだ。
明日に持ち越すことにして部屋を出ようとすると思いっきり腕を引かれ、お嬢に押し倒される形でベッドに倒れ込んだ。
お嬢の瞳に俺が映っているのが見える。きっと俺の目には、お嬢が写っているのが見えるのだろう。
しばらく視線が絡んだ後、お嬢はそのまま顔を近づけて来た。
何度も何度も互いの唇を啄みながら、お嬢は俺のベルトに手をかけた。
そこで俺は察した。
あぁ、きっとこの4年の間にお嬢は《《オトナ》》になったんだなと。
酔っているくせに、いくらなんでも手つきが慣れ過ぎている。
経験していないとこんなことにはならないだろう。
こうなることも予測はしていた。
離れていれば気持ちだって冷めてしまうし、人間は苦楽を共に過ごす身近な存在に惹かれるようにできている。
だからお嬢に大切なやつができてたって何も不思議じゃない。
しかし、こんな形で気づいてしまうのはなかなかメンタルを抉られる。
当の本人は、俺の首筋に唇を当てたまま完全に静止していた。
「スーーッスーーッ」
「・・・お嬢?」
反応はなかった。
なんとも気持ちよさそうに眠っている。無防備すぎるお姫様だ。
こんな姿を晒されると、俺のいなかった4年の間に何か変なことに巻き込まれたのではないかと心配になる。
お嬢を綺麗に寝かせ毛布をかける。
部屋の感じは4年前と変わっていない。
彼氏との写真とか、そういう男を匂わせる類の物も一切なかった。
「はぁぁ」
少し安心している自分がいた。
俺も自分の部屋に戻り、ベッドに寝転んで天井を見つめた。
やはりそろそろハッキリさせる必要がある。もしお嬢に誰か相手がいるのなら、俺は早急にこの家を出よう。
一緒にいるのは相手にも申し訳ないし、何より俺がしんどい。
「そうなると、あれもいらなくなるか……」
俺はクローゼットに仕舞ってある、小さな箱の存在を思い出した——。