じれ恋



「紺炉昨日は迷惑かけたみたいでごめんなさい。ベッドに寝かせてくれたのも紺炉だよね?ありがとう!」


翌朝、眠そうに起きて来たお嬢は、昨日帰って来てからの記憶がないらしい。


「それはいいんですけど、聞きたいことがありまして……」


「ん?なーに?」


「その……高校卒業してから今まで、何人か付き合ったりとか、しました……」


「・・・え、急にどうしたの……?」


こんなの完全にセクハラ案件だ。


お嬢の顔が強張るのも分かる。


しかし、今のでもう答えは出た。


つまりは、そういうことだろう。


「いやぁ、なんか昨日お嬢に押し倒されたんですけど、酔ってるくせにすごい慣れた手つきだったんで驚いたんですよ。でも色々経験したんだったら納得いきました!もしかして、今も彼氏いたりします……?」


努めて明るくいようと、自分の声が上ずっているのが分かった。


全てを言い終えてからお嬢の顔を見ると、彼女は目にいっぱいの涙を浮かべ、茫然と立ち尽くしていた。


こんな顔をさせてしまうのは2度目だ。


「お嬢が泣くことはないんです。もしかしたら俺のこと気遣ってくれて言い辛いかと思って・・・。実は俺も向こうで付き合ったりとかしたんで!」


もちろんこんなの出まかせだ。


告白されたり、誘われたことは、まぁなかったとは言わないが、もちろん全て断っていた。


つまりこの4年間は誰とも寝ていないし、その前も、最後にシたのがいつだったか記憶にないくらいだ。


これぞまさにセカンド童貞。


「・・・私は……他の人と付き合うとかそんなこと考えられなかった。彼氏作りなよって言われたけど……紺炉以外考えられなかったもん!紺炉が帰ってくるのをずっと楽しみにしてたから、それまでに色々勉強しようと思って友達に色々聞いたり、雑誌とかで調べただけ....。紺炉と以外、そういうことしたいなんて思わなかったもん...!もちろん今も彼氏なんていないからっ!」


お嬢は叫ぶように言い残して部屋の方に走って行った。


その後ろ姿を見て、俺はやらかしてしまったんだと頭を抱える。


またも身勝手な〝嘘〟でお嬢を傷つけてしまった。
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