じれ恋
Side 愛華


こんなに声を出して泣いたのは久しぶりだった。


『実は俺も向こうで付き合ったりとかしたんで!』
 

さっきの言葉が頭の中で何度も何度も繰り返される。


それはそうだよね。


遠くにいた小娘より、近くにいる素敵なお姉さんの方がいいに決まってる。


婚姻関係があっても不倫する人がいるくらいだ。


好きだとか付き合おうなんて、そんなただの口約束は、生理的欲求の前ではなんの意味ももたない。


きっとグラマラスな女性に囲まれて、紺炉も目が覚めたんだろう。


私のことが好きだと思ったのは勘違いだったって——。


もういいや。


恋なんてしなくたって、結婚なんてしなくたって生きていける。


こんなに傷つくくらいなら、もう誰も好きにならない。


私は堅く決意して、枕に顔を沈めた。
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