じれ恋
ブラを買いに行く時も紺炉を連れて行った。


カップルとも親子とも捉え難い私と紺炉の組み合わせに、お店の人はかなり怪しんでいたっけ。


晴れてブラジャーデビューを果たしたはいいものの、スポブラ一択だった私は後ろでホックを止めることになかなか慣れなくて、朝は必ず紺炉を呼んでいた。


「ねぇ紺炉ーー!」


部屋から大声で紺炉を呼ぶと、入りますよとひと言言って私の部屋の襖が開く。
 

「やっぱホック上手くできない!紺炉やってー!早くしないと学校遅れちゃう!」


私はブラの両端を背中でクロスさせた状態で紺炉にお願いした。


紺炉は私が我儘を言っても滅多に怒ることはなかったし、怒りとかそういう負の感情を私に向けて出すことは絶対になかった。


しかし、あの時はなんだか不機嫌な様子が伝わってきた。


「お嬢、いい加減自分でできるようになってください。いつでも俺がいるわけじゃないんですから」


思い返すとこの頃から、紺炉は随分とよそよそしくなった。


そんな彼とは反対に、この頃から私は紺炉をただの世話係ではなく〝1人の異性〟として見ていたんだと思う。
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