じれ恋
それは昨日のこと。
「ねぇ紺炉。私おじいちゃんから縁談の話された。相手の人、なんかすごい組の若頭なんだって……」
ちょっとくらい嫉妬の顔を見せてくれるかと思った。
『お嬢はお嫁になんていかなくていいですよ』って、『ずっと俺がそばにいます』って。
そう言ってくれるのを期待していたのに。
彼の口から出た言葉は、そのどれでもなかった。
「良かったじゃないですか。それなら俺も安心して任せられます」
期待した私が馬鹿だった。
思い出すだけでも沸々と怒りが込み上げてくる。
こうなったらとことん困らせてやる。
こうして私は昨日から籠城を決め込んでいるのだった——。