じれ恋
「ひどいじゃないか、要」
「テメェ何しにきた、匠」
傘を持って迎えに来てくれた紺炉は、私もまだ聞いていない彼の名前を知っていたらしい。
私は「え?知り合い!?」と一人あたふたしたいた。
「可愛らしい君のご主人に挨拶させてもらっただけだよ」
〝可愛らしい〟なんて普段言われることがないからまたドキッとしてしまう。
まだ話の途中だと言うのに、紺炉は急に私の手をぐいぐい引っ張って歩き始めた。
「ちょっ……紺炉待って!」
「じゃあまたね。愛華ちゃん」
私は足がもつれそうになりながら、手を振ってくれた彼に頭を下げた。