じれ恋



連絡の取れない私を心配して、雨の中探し回ってくれた紺炉はその日熱を出して倒れた。


雨に濡れて冷たいはずの身体はとても熱かった。


犬飼が体を拭いて着替えさせ、今は自分の部屋で寝ている。

 
「お嬢。一緒に卵とじうどん作りませんか?要さんに薬飲ませる前に何か食べさせないと」


「作る!!」


私は間髪入れずに返事をして、犬飼先生の指導の下、初めて卵とじうどんなるものに挑戦した。


「お粥でも作るのかと思ってた!」


「何日も食べてないわけじゃないからそこまでしなくてもいいですよ。五十嵐家の病気メシはうどんです!要さんもうどん好きだし。お嬢も昔からそうだったんじゃないですか?」


寝込むほどの風邪なんて小学生以来引いていなかったからすっかり忘れていたけれど、そういえばうちは昔から風邪を引いた時はあったかいおうどんが出ていた。


かまぼことわかめ、星形にくり抜かれた人参が入っていて、私はそれが大好物だった。


子供用のフォークを使って紺炉が食べさせてくれたのだ。


それも嬉しくて、風邪をひいた時の密かな楽しみになっていた。


紺炉がしてくれたように、私もかまぼことわかめ、星形の人参を入れて溶き卵の上から小ネギも散らしてみた。


「バッチリですね。じゃあお嬢これ要さんに持っていってあげてください!」


犬飼はお盆にうどんとお水、お箸とれんげと解熱剤を乗せてくれた。


手渡されたお盆をそーっと持って私は紺炉の部屋をノックする。
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