じれ恋
*
次の日も、そのまた次の日も。
お嬢は何事もなかったように〝いつも通り〟だった。
もう親父に縁談のことは伝えたのだろうか。
そんなこと気にする資格なんて俺にはないのに、どうしたって気になってしまう。
お嬢は受験生として本格的に勉強の毎日で、帰ってくるのも遅い上に家でもすぐに机に向かう日々だ。
どんな顔をして、何を話せばいいのかすっかり分からなくなっていた俺としては、かえってその方が有難かった。
その日、親父は東雲組の組長と会う予定があった。
別件がある相模さんに代わって俺が付いて行くと、東雲組の親父さんの横にはもちろん匠もいた。
間もなく世代交代するという噂もある。
「愛華ちゃん、縁談の話が来てるんだって?」
部屋の外で待機していると、匠は開口一番俺にとって今まさにとてもデリケートな話題を楽しそうに振ってきた。
「・・・あぁ。相手の若頭って、お前のことじゃなかったのか」
「まさか。そりゃ、愛華ちゃんは可愛いけどさ。彼女に想い人がいるのを知ってて、横入りするようなせこいマネはしないよ。それに・・・」
匠は言葉を続けた。
「愛華ちゃんのお陰で、僕も覚悟決められたからね」
一体何の話をしているのかさっぱりだったが、あえてそれ以上は聞かなかった。
ただ、匠は何かが吹っ切れたような、そんな清々しい表情をしていた。
次の日も、そのまた次の日も。
お嬢は何事もなかったように〝いつも通り〟だった。
もう親父に縁談のことは伝えたのだろうか。
そんなこと気にする資格なんて俺にはないのに、どうしたって気になってしまう。
お嬢は受験生として本格的に勉強の毎日で、帰ってくるのも遅い上に家でもすぐに机に向かう日々だ。
どんな顔をして、何を話せばいいのかすっかり分からなくなっていた俺としては、かえってその方が有難かった。
その日、親父は東雲組の組長と会う予定があった。
別件がある相模さんに代わって俺が付いて行くと、東雲組の親父さんの横にはもちろん匠もいた。
間もなく世代交代するという噂もある。
「愛華ちゃん、縁談の話が来てるんだって?」
部屋の外で待機していると、匠は開口一番俺にとって今まさにとてもデリケートな話題を楽しそうに振ってきた。
「・・・あぁ。相手の若頭って、お前のことじゃなかったのか」
「まさか。そりゃ、愛華ちゃんは可愛いけどさ。彼女に想い人がいるのを知ってて、横入りするようなせこいマネはしないよ。それに・・・」
匠は言葉を続けた。
「愛華ちゃんのお陰で、僕も覚悟決められたからね」
一体何の話をしているのかさっぱりだったが、あえてそれ以上は聞かなかった。
ただ、匠は何かが吹っ切れたような、そんな清々しい表情をしていた。