じれ恋
「……全く、遅すぎる!いつまで縁談のフリをさせられるかと思ったわ!」


そう言っておじいちゃんはゲラゲラ笑い出した。


相手は紺炉だし、頭ごなしに反対とかはしないだろうとは思っていたけれど....。


さすがにこれは想定外の反応だった。


それにしても〝フリ〟って一体どういうことなんだろう?


「・・・親父、今何て?」


「おじいちゃんどういうこと?」


私も紺炉も理解が追いついていなかった。


「縁談なんてとっくに断っとる」


「「ええッ!?」」   


私と紺炉の声が綺麗にハモった。


「2人があまりにもモタモタしとるから、色々根回しをしといたんだ」


私は根回しというのがなんのことなのかわからなかったけれど、紺炉は心当たりのあるような顔をしていた。


「相模!」


「はい」


おじいちゃんが呼んだ瞬間、いつの間に部屋に入ってきていた相模が返事をした。


「ここに全員を集めてくれ」


「わかりました」


急にみんなを集めるなんてどうしたんだろう。


私が無意識に制服のスカートの裾をギュッと握り締めていると、その上から紺炉が手を重ねてくれた。


私は握っていた力を緩めて紺炉の指に絡める。


『俺がいるから大丈夫』と、握った手からそんな思いが伝わってくるようだった。
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