可愛いわたしの幼なじみ〜再会した彼は、見た目に反して一途で甘い〜

第10話

○(引き続き)神社の境内(夜10時前)
一通り話し終え、ふぅっと息をつく実里。
一樹は一言も発さずにただ静かに実里の話に耳を澄ませていた。

実里「はは、子どもって怖いよね。・・・たまに残酷って言うか」
  「あれから、男子がちょっと怖くなっちゃって・・・。何年も前のことなのにね」

  「あっ、でもね、高校は小中同じだった人たちが誰も行かないような、
   ちょっと地元から離れた高校には入れたから、今は仲のいい友達もできたし、
   学校生活も楽しいんだよ」
巻き返すように明るい声で話す実里。

一樹はまだ一言もしゃべらない。

実里(いっくん、黙ったままだ・・・。
さすがのいっくんも引いたかな?昔よく遊んだ子がビッチなんて呼ばれてたなん・・・)

恐る恐る一樹の方を向く実里。

すると一樹の瞳から大粒の涙がこぼれようとしていた。

実里 驚いて、「いっくん!?」
一樹「いや・・・」
一樹はうなだれたようにそっぽを向く。
表情が窺えなくなってしまった。

それからようやく、顔を上げる一樹。
実里(あ、いっくんの瞳、涙が・・・。
   でもきらきらしていて、きれい)

実里の方を向き、
一樹「・・・みさとのそばにいられなくてごめん」
ぽすっとみさとの肩に力なく頭を載せる一樹。
ふたりは月明かりに照らされた神社の境内の
木の陰で、今は向かい合っている。

実里「いっ、いっくん・・・」

それからぽつりと一樹はつぶやくように言った。

一樹「みさとのことが、すごく好きだ」

少しかすれた、そのささやくような小さな声はかろうじて実里の耳に届いていた。
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