可愛いわたしの幼なじみ〜再会した彼は、見た目に反して一途で甘い〜

第11話

○週明けの学校、教室(朝)
クラスメイトも徐々に登校してきてざわつき始める教室内。

めい「で!?どうだった夏祭りは!?」
めいが目を爛々と輝かせ実里を質問攻めにしてくる。
実里「どうって――・・・」

そう言いよどみながら夏祭りの終わりに一樹に言われたことを思い出す実里。

*回想
一樹「みさとのことが、すごく好きだ」
*回想終わり

思い出し赤面する実里。
実里(いっくん、あれどういうつもりで言ったんだろう)
(結局あの後すぐに帰ったんだよね)
(いっくんが夜遅いからって家まで送ってくれたけど・・・。お互いに口数少なかった)
(だから、あの真意も聞くに聞けず・・・)
(だけど・・・)

*回想
○実里の家からほど近い住宅地(夜10時半をまわっている)
実里と一樹は向かい合って立っている。

一樹「じゃあな」
実里「うん、ばいばい」
自然な笑顔で微笑む実里。目はまだ赤い。
一樹「また連絡する」

そう言って一樹は、今度は黙って実里を軽く抱き寄せ
「おやすみ」と耳元でささやいた。

*回想終わり

実里 思い出して赤くなる。
(もー・・・!なにあれ・・・!!)

しばらくそんな実里を黙って見つめていためい。

めい(ふんふん、これは確実になんかあったな・・・)
目をさらに輝かせる。
めい(しかし、今は人目があるから・・・)

○昼休み、学校の屋上
実里とめいは屋根のある場所に腰を下ろし、弁当箱を広げている。
ほかには誰もいない。

夏祭り中にあったことをめいに事細かく報告した実里。

めい「まじかー・・・めーーっっっちゃ、ときめくんだが!?」

  「えー、、思ったより進展してるじゃ~ん(ひとりつぶやく)」
  再び実里の方に体を向ける。
  「そっそれで、もちろんOKしたんだよねっ!?」
まるで自分の身に起こったことのように興奮気味のめい。
実里「えっ?OKってなにが?」
きょとんとしている実里。
めい「だーかーらー、そのいっくんの告白に私も好きだよって言った!?」
実里「(突然赤く染まる頬)えっまさか!だって、いっくんがどういうつもりで言ったのかもわからないし。
友達として、って意味かも」

めい おおげさにがっくしと肩を落とす。
  「はぁーーーっ!またこの子は・・・」
そして眼光鋭く実里の方を見て、
  「夏祭りも終わって、ひと気もない神社で、
   男女二人っきり。そのシチュエーションでの好きはそういうことでしょうが!?」
実里「えぇー・・・。そう、なのかな」
照れながら困った表情の実里。

めい「いいから確かめなさい!それで、実里も好きって伝えるの!」
語気が荒くなるめい。
実里「(それに押され)う、うん」
   (あ、あれ?私めいにいっくんのことが好きって伝えたっけ?)
めい(ふっ・・・あんたの反応見てればわかるよ・・・)
無言の間に実里の心の声を悟ったのか、あきれ顔のめい。

すると、
ピロン♪とメッセージの着信音。
一樹からだった。

『今日、一緒に帰ろ』

実里(「帰ろ」ってあの見た目からは考えられないな・・・)
  (・・・かわいい)
   不覚にもキュンとする。

めい「きゃー!いいじゃんいいじゃん!」
いつの間にかメッセージをのぞき込んでいるめい。

実里 はぁ、とため息をつく。
 
  (なんか前までよりもさらに緊張するような)

自分の気持ちの変化に戸惑いつつも、
『うん!いつものところで待ってるね』
と返事を送った。

○放課後、待ち合わせ場所の駅前(夕方、辺りはまだ明るい)
帰宅するサラリーマンや学生の姿が目立つ。

一樹はすでに実里を待っていた。

みさと「いっくん!」
   「ごめんね、待たせて」
   一樹の元に駆け寄る
一樹「ん、いいよ」
  「つーか、全然待ってない。行こ」
実里の手を取り歩きだす一樹。
実里「…っ!」
実里(うー・・・。私今までいっくんにどんな態度とってたっけ)
(なんかどきどきして、いっくんの顔まともに見られないよ・・・)

そのとき、ぽつぽつと大粒の雨が降り始める。
雨脚は次第に強くなり、一気に本降りになる。

一樹「やばっ!みさと走れ!」
実里「えっ!?」

言われるがまま一樹の背中を追う実里。

○一樹が一人暮らしをするアパート
外は大雨、止む気配はない。
ふたりは一樹のアパートに避難した。家の中に入ったところ。

一樹「ははっ、走ったのに結局びしょ濡れだな」
  「待ってて、タオルもってくる」
そう言って部屋の奥に姿を消す一樹。

実里(どっどうしよう・・・。言われるがまま
ついて来ちゃったけど・・・)

(いっくん、一人暮らししてるんだ・・・。知らなかった)

一樹がタオルを持って戻ってくる。
一樹「はい」
実里「あっ、ありがとう」
ためらいながら受けとる。

一樹「ほら、入って」
実里「う、うん。・・・お邪魔します」

一樹「(ふと思い出したように)悪い、
服ぬれたままだと気持ち悪いよな。シャワー使う?」
実里「えっそんな、悪いからいいよ!」
全力で遠慮する。

一樹「そっか。じゃあ、着替え持ってくる」

再び部屋の奥へ消える一樹。がさこそとクローゼットの中身をあさっているらしい物音。

再び戻ってくる。
一樹「俺のだからサイズでかいと思うけど・・・。
これとかどう?」

Tシャツと短パンジャージを手渡してくれる一樹。

実里(いっくんの服・・・)
(って私何考えてるの!?)
「あっ、ありがとう!」
慌てて受け取る実里。

一樹「じゃあ脱いだもの干すときこのハンガー使って」
一樹がハンガーを手渡してくれる。
実里「はい!?」(思わず声が裏返る)
一樹「俺ちょっとシャワー浴びてくる」
実里(あ、あぁ、そういうことか。
もう、私は一体何考えてるの・・・)

「う、うん。行ってらっしゃい・・・」
赤くなっている顔を隠しながら、なんとかそれだけ言う。

~数分後~

○一樹の部屋
ベッドと、小さい棚と座卓があるシンプルな部屋。
生活感はあまりない。

実里は一樹が貸してくれただぼだぼのTシャツと短パンジャージに着替えている。

実里 所在なさげにベッドに腰をかけ、きょろきょろと部屋を見渡す。
  (改めていっくん、ここで暮らしてるんだ)
  (なんか、あんまり生活感ないな)
  (もっと、何というか、派手なのを予想してたけど・・・。
   そういえば、いっくんの私服も意外とシンプルだったし、
   髪とかは置いといて、あんまりファッションとかにも興味ないのかな。
   ちょっと意外)

ガラッ。

脱衣所の扉が開き、一樹がシャワーから戻ってくる。

バスタオルを頭にかぶり、上半身は裸。

実里 真っ赤になってベッドから飛び上がる。
   「ふっ、服きて!」

実里の反応に対して一瞬間があったが、すぐにニヤニヤしながら面白がって実里に近づく一樹。
一樹「なんでー?」
実里「な、なんでって、目のやり場に困るから・・・!」
なおも赤くながら見ないようにと手で顔を覆う。
一樹そんな実里をよそに、さらに実里にと距離を詰める。
一樹「ふーん・・・」
声の調子から、一樹がこの状況を楽しんでるんだと察する実里。
実里 パニック状態
   顔を覆っている指の隙間から、一樹の子供の頃からは想像も付かない引き締まった体が見える。
(あっだめだ、倒れる・・・
一樹「あっぶ・・・!」
すんでの所で実里を両腕で抱きかかえる一樹。
実里「ごっごめん!」
一樹「こっちこそごめんな。実里の反応がかわいすぎて・・・、
ついからかった」

実里(・・・またっ!今さらっと「かわいい」って言った!?)

一樹「そうだ、なんか飲む?」
実里(心を落ち着かせて)
「じゃ、じゃあお茶を・・・」
一樹「おっけ。ちょっと待ってて」

実里(いっくん、やっぱりこういうことに慣れてるのかな。
だって全然普通だもん、むしろ私だけテンパっちゃって本当恥ずかしい・・・)
一樹両手で麦茶の入ったグラスを持ち戻ってくる。
今度はちゃんと服も着ていて、ほっとする実里。

実里「よかった・・・」
一樹「よかったって何が?」
実里(き、聞かれてたっ!)
  「なっ何でもないよ」
一樹「そう?」
そう言ってテーブルの上に二人分のグラスを置く。

実里「ありがとう・・・」
一樹「どういたしまして」と微笑む。
どかっと実里が座るベッドの上に自分も腰を下ろす一樹。

実里(あれ、・・・いっくんいつもと髪ちがう)
(普段より幼く見えるような気がする)
思わず手を伸ばし一樹のぬれた頭に触れる実里。

一樹「・・・」
一樹の髪になんとなく触れながら、
実里(髪の毛がぺっちゃんこで・・・なんか)
実里「いっくん、かわいい」
思わず声に出してしまう。

一樹「は?(むすっとした表情になる)
・・・俺のこと、怖いんじゃないの」
そう言って実里の顔を見つめ返す一樹。

実里「へっ?」

再会してまもない頃を思い出す実里。
(あっそうか。あのときは、まさかこの人がいっくんだとは思わなかったからびくびくしてた。
手首のタトゥーを見たときはもう2度と関わりたくないって。
でも今はそんなことない。なんて言うかむしろ、・・・いっくんの隣は安心する)
実里「・・・もう、怖くないよ」
一樹「・・・ん。そっか」
心底嬉しそうな表情。

実里「あっ!ホクロ」
実里が一樹に再会して以来の大きな声を出す。

至近距離で一樹の顔を見つめ、右目の下に当時と変わらないホクロを発見する。
思わず一樹の目の下のホクロに触れる。
室内と言うこともあってか、一樹の隣は落ち着くと自覚したからか、いつの間にかリラックスしている実里。昔と同じような雰囲気に。

実里「あははっ、ホクロってずっと同じ場所にあるんだね」
一樹「そりゃそうだろ・・・」
一樹の顔色が心なしか赤くなっている。
実里「そうかなぁ・・・」
そう言いながら一樹の顔をまじまじと見つめる実里。
一樹「なんだよ、見過ぎ・・・」
実里「あっ、ごめん・・・。
だけど、前は気づかなかったけど、ホクロ二つあったんだね。
ほら、耳たぶのところにも」
そう言って今度は一樹の耳に触れる実里。
一樹「・・・っ、やめろ」
気づけば一樹の顔は気のせいじゃなく真っ赤に染まっていた。

一樹「恥ずい(つぶやくように言う)」

一瞬の間をおいて、我に返る実里。
実里「ご、ごめん!昔にもどったみたいでうれしくなって」
「私なんかに触られたくないよね、ほんとごめん・・・」

慌てて一樹から距離を取ろうとする実里に、
一樹ははぁっと大きなため息。

一樹「そうじゃなくて・・・。

・・・お前ほんと鈍すぎ」

一樹「俺のこと、ただガキの頃よく遊んだやつだって思ってるの」

ためらいがちに、一樹は実里に尋ねる。
聞こうかどうか迷っているという風に。

実里「えっ?」
一樹はいつになく真剣なまなざしで実里を見つめている。
一樹にじっと見つめられ、たじろぐ実里。

だけど、答えは自ずと決まっていた。
(ちがう、いっくんは私にとってもっと大切な・・・)

今日学校でめいに背中を押されたことを思い出す。

*回想

めい「いいから確かめなさい!それで、みさとも好きって伝えるの!」

*回想終わり

実里(あぁ――・・・。
めいは先に私の気持ちに気づいてたんだ・・・。
叶わないな)
ふっと笑みがこぼれる。


実里(「好き」という感情は、
私には縁がないものだと思ってた。

だけど、あの頃と何も変わらない、
いや、むしろ今はもっと――・・・)

実里(幼なじみ以上に、好きな人)

実里 心臓がバクバクと音を立てているのがわかる。
一樹にこの音が聞こえてしまっていないだろうかと心配になる。

ドク、ドク、ドク、ドク・・・実里の心臓の音)。

実里(緊張しすぎておかしくなりそう)

(でも、伝えなきゃ・・・
いっくんに)

実里 体温の上昇を自覚するが、もうなりふり構わっていられないという表情。

それから、顔を上げ勇気を出し一樹の瞳をじっと見つめる。無論頬は赤く染まっている。

実里のその反応が意外だったのか、一樹は「・・・?」という表情で実里を見つめ返す。

実里「好き」
声が震える。小さい声でそうつぶやいた。

実里「いっくんのこと、大好き」
今度ははっきりと、言葉にして伝える。

驚いた表情の一樹。
目を見開いて実里を見つめる。

実里「・・・びっくりした?」
一樹の反応の意図が読めず、先に尋ねる。

一樹「いや・・・。
まさかみさとが言ってくれると思ってなかったからびっくりした」
「けどっ・・・」

実里を抱きしめる一樹。

実里(いっくん・・・?
なんかこれ、ハグとは違って密着度高い。
絶対に心臓の音いっくんに聞こえてる・・・。
だけど、いっくんの体熱い・・・)

一樹「はぁーーーー、やっと俺のもんになった」
実里「俺のものって・・・!?」
真っ赤になる実里。
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