【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜
(……すごい)
しかしその直後。オリアーナの中で魔力が枯渇した。身体中が重くなり、がくんと膝を突く。召喚術を扱い慣れていないせいだ。
直後。白く優美な幻獣の毛が、黒に染まっていく。血走った目でこちらを睨みつける彼らを見て、全身の血の気が引いていく。
(聖女の支配が……――切れた)
目の前にいるのは、首輪が切れたただの怪物だ。セナも魔力が枯渇しているから、襲われても防ぎようがない。
「……――リア」
セナがオリアーナを庇うように抱き寄せる。セナの手に自分の手を重ね、凶暴化した幻獣たちを見据えた。
始祖五家の魔法士たちは皆、戦場に立ち国を守る使命がある。いつ死んだっておかしくはないのだ。ここで死んだとしても、他の生徒たちを守った名誉ある死。始祖五家の者としてふさわしい最期だろう。
(セナの手、冷たい)
でも願いが叶うなら、この人ともう少しだけ傍にいたかった。恋人として、もっと色んな幸せを味わいたかった。そんな願いを抱きながら、彼の手を握る力を強めた。
幻獣が爪を振り下ろすと、セナが張った気休め程度の防壁がいとも容易く破られる。
――逃げられない。そう覚悟したときだった。
「姉さんに指一本でも触れることは許しません。――美しい幻獣たちよ、次は僕が相手です。――光よ」
ポニーテールにした長い金髪が揺れる。アーネル公爵家の紋章が刺繍された戦闘用のローブ。すらりとした体躯。透き通るような金目。目の前に立つ青年は……。
「……レイ、モンド……」