【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜
「なぁ、今日編入生が来るらしいぜ。可愛い女の子かな?」
「残念。さっきこっそり見に行ったら、男子だったよ。超美形の」
「おいお前。彼女は始祖五家アーネル公爵家のご令嬢。女性だよ」
「マジ!? あれはどう見ても男じゃ……」
後期の始業式。魔法学院の生徒たちは浮き足立っていた。何しろ、話題のレイモンドの双子の姉が編入してくるというのだから。彼女は元非魔力者でアーネル公爵家の『出来損ない』でありながら聖女に抜擢された有名人だ。
魔法学院の生徒は男女ともにズボンなので、廊下を歩けばオリアーナは男と見間違えられてしまう。
「オリアーナ。この教室だ。まー、知ってるか」
「はい」
エトヴィンに案内されて、夏休み前まで通っていたのと同じ教室に案内される。
教室の前でゆっくり息を吸い、扉を開く。教卓の横に立つと、生徒たちの視線が集まった。特に女子生徒たちは憧憬の眼差しをこちらに向けていて、「なんて素敵な方なのかしら」と噂している。
「はじめまして。オリアーナ・ガードルです。これからお世話になります」
にこりと愛想よく微笑むと、歓声が上がる。
以前も一緒に過ごしていたから、オリアーナにとっては『はじめまして』ではないのだが。
教室内を見渡すと、レイモンドと視線がかち合った。魔法学院の制服をかっちりと着こなし、眼鏡の奥で優しく目を細める。
それを見て、つんと鼻の奥が痛くなった。オリアーナにとっては、彼と同じ学校に通えるのは夢のようなことだから。馬鹿にされ続けた自分が、優秀な弟と一緒に勉強できるなんて。
「えー、ということだ。席は……そうだな。セナの隣が空いてるな」
オリアーナが席に着くと、セナが頬杖を突きながらいたずらに口角を上げた。
「――おかえり。魔法学院のミスプリンス様?」
「からかわないで」
「制服、よく似合ってる。今日もものすごい可愛い」
「〜〜! か、からかわないで……」
オリアーナは、かっと顔を赤くして目を逸らした。
かくして。オリアーナの身代わり生活は終幕を迎え、新たな生活がスタートした。しかし、彼女には平凡な生活とはほど遠い、魔法学院の王子としてのてんてこ舞いな日々が待ち受けている。
――そして、皆から頼られる魔法学院のミスプリンスは唯一、婚約者の幼馴染に対してだけは、年相応の少女のような可愛らしい一面を見せるのだった。
おしまい。
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あとがき
最後までお付き合いくださりありがとうございました(՞ .ˬ.՞)"
もし少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
暑い日が続いていますね。体調を崩されないようにご自愛ください。皆さまの夏が素敵なものになりますように。