【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜
慣れないことを人前でして上手くいくだろうかと返答に迷っていると、生徒の中でひとり手が挙がった。
「俺がやります」
自ら立候補したのはセナだった。オリアーナをフォローしたのだ。
「まぁいいでしょう。では、お願いします」
「はい」
セナはそう言って、左手の人差し指から指輪を外し、親指の指先でパチンと弾いて宙に浮かせた。指輪は回転しながら空中へ飛んでいく。
《――現れよ》
宙に浮かぶ指輪は、またたく間に黒々とした光沢のある杖に変わった。マチルダのものより細くスタイリッシュで、先端に黒い稲妻が走っており、『闇』の力を象徴している。セナは杖に《――戻れ》と命じ、形状をデフォルトに戻した。彼の迅速な魔法展開に、生徒たちは「おお」と感嘆の息を漏らした。
「ありがとうセナさん。では、他の皆さんも――始め」
マチルダは手を叩いて合図した。
オリアーナはおもむろに、制服のシャツ越しにペンダントに触れた。胸には、アーネル公爵家の家宝である魔法石が引っ提げられている。その石は、非魔力者であってもある程度の魔法を行使できるという代物。
「本当に大丈夫ですの? レイモンド様」
「多分ね。やってみるよ」
こちらを心配するジュリエットは、すでに杖の現出に成功しており、赤い炎をまとう杖を握っている。彼女に見守られながら、オリアーナは呟いた。
《――現れよ》
すると――。