【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜
凄まじい光が辺りに離散する。目も開けていられないほど強い光が収束すると、生徒たちは何事かとこちらを振り返った。
「小さ……!?」
オリアーナの手の上に、小指程度の長さの杖が転がっていた。白い本体に緑と黄色の緻密な模様が描かれており、上部が窪んでいる。よく見ると杖は筒状になっており、杖というより――笛に見える。
(まぁ、私の力量ではこんなものか)
ささやかすぎる自分の杖を、訝しげに眺めていると、血相を変えたセナが声を張り上げた。
「レイモンド! それをすぐに捨てて破壊しろ!」
「――え?」
いつもは無表情で冷静な彼が取り乱している。その直後――講堂内が凄まじい獣の雄叫びに揺れた。
『ウオオォオオオーーーー!』
「…………!?」
肝心の、声の主の姿は見えない。けれど、確かに存在する何かが、どこかからけたたましい咆哮を上げている。唸り声が部屋に反響し、鼓膜を震わせる。生徒たちは当惑し、耳を塞いでうずくまったり、恐怖に悲鳴を上げたりしている。
《――風の刃》
マチルダが呪文を唱えると、オリアーナの杖はパリンと音を立てて割れた。手のひらに乗った物体に魔法を命中させる精密性は見事だ。マチルダは額に汗を滲ませ、ひどく動揺した様子でこちらに駆け寄った。