【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜
08_本物のプリンスの登場(1)
「あのっ……殿下! これよかったら食べてください……! 頑張って作ったんです……!」
ある日の午前の講義終わり、教室でオリアーナのところに行列ができていた。
「ありがとう。これは……クッキーだね。熊に猫……こっちはうさぎかな? 可愛くて食べるのが惜しいな」
「そ、そんな……っ。もったいないお言葉です……っ」
「あとでいただくね」
「はいぃ……」
恒例――殿下への貢ぎ物の時間だ。
オリアーナは、愛想よく微笑みながら手作りクッキーが収められた箱の蓋を閉じた。
相手の女子生徒の方は、うっとりとした表情で頬を朱に染めた。
最後の女子生徒を見送り、オリアーナは息を吐いた。
(みんなの気持ちはありがたいけど……持ち帰るのが大変なんだよね)
机を埋め尽くす贈り物の数々。食べ物に関しては、屋敷の使用人たちに分けたりしている。そんなオリアーナの隣で、ジュリエットが両頬に手を添え、恍惚とした表情で呟いた。
「相変わらずの人気ぶりですわね、オリアーナ様。わたくしも、皆様に負けないように精進いたしますわぁ……!」
「ジュリエット。君は少しは――自重しよっか」
ジュリエットをいぶかしげに見つめる。