【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜
リヒャルドはふんと鼻を鳴らした。もはや何を言っても不興を買ってしまう気がする。
すると、彼の視線がジュリエットが持ってきた巨大な彫像に留まる。
「なんだこのでかい彫像は」
「特製、レイモンド様像ですわ。壮麗で素晴らしいでしょう?」
「とくせいれいもんどさまぞう……」
ドン引きしたリヒャルドはジュリエットに半眼を向けた。
「浮気か? あんだけオリアーナ嬢に執心してたのに」
「ふふ、浮気だなんてとんでもないですわ」
そう。浮気なんてとんでもない。認識操作の魔法さえ看破してしまうほど、オリアーナへの愛は本物だ。
ジュリエットが意味ありげに笑うと、リヒャルドは不思議そうに首を傾げた。目の前にいるのがオリアーナだとは知りもせずに。
リヒャルドは、こちらにびしと指を立てた。
「こうなったら、どっちが王子にふさわしいかどうか勝負だ!」
「ふさわしいも何も、君は正真正銘の王子ではありませんか。張り合う必要なんてないでしょう?」
「うるさいぞ。これは依頼じゃなく命令だ。分かったな」
それだけ言い残し、彼は踵を返した。
嵐のように過ぎ去って行ったリヒャルドの背中を見送りながら、ジュリエットがふふと笑った。
「青春ですわぁ。わたくし、お弁当を持って応援に行きますね!」
「もしかして面白がってる? 子どもの運動会じゃないんだから。茶化さないでよ」
オリアーナは、面倒事の予感がして肩を竦めた。