【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜
ジュリエットが木剣に向かって手をかざし、呪文を唱える。すると、宙に浮いていた木剣はじゅっと音を立てて燃え、瞬く間に灰になり地面に舞い落ちていく。
さりげなくセナが、女子生徒に灰が被らないように腕を引いて体で抱き庇った。
反射的に魔法を繰り出して女子生徒を守ったジュリエットに皆が感心する中、彼女の目にはオリアーナしか映っていない。
「お見事ですわレイモンド様ぁっ! なんと美しい型、なんと華麗な剣さばき……っ! わたくし、あなたになら斬られても構わないですわ。いえむしろ斬ってくださいましぃぃぃ……!」
身体をよろめかせたジュリエットは、近くの生徒に支えられる。はぁはぁと息を荒くし、目を血走らせた彼女は、さっきの活躍が嘘のようにドン引きされていて。
(お手柄だ、ジュリエット。あとでお礼を言わないとな)
一方、リヒャルドはがくんと膝を地に着けた。
「俺の完敗だ」
「リヒャルド王子……」
「やっぱりお前、お前って……」
彼は俯きがちに、地を這うような声で呟いた。余程落ち込んでいるのだろうか。しかし、次の瞬間――。
「ほんと、超〜〜〜〜かっこいいな!」
「へ?」
顔を上げたリヒャルドは、紫の瞳の奥をきらきらと輝かせた。オリアーナが困惑して一歩後退すれば、彼はすかさず体を前のめりにして手を握ってきた。
「やっぱレイモンドはすげーよ! 俺がこんなに太刀打ちできないのはお前だけだ! 尊敬するぜ! 弟子にしてくれ!」
「それはちょっと……」
「師匠!」
こちらとしては、女性たちから殿下ともてはやされてただでさえお腹いっぱいなのに、弟子なんて抱えられやしない。リヒャルドは懇願するような眼差しで迫ってくる。