【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜
セナは、レイモンドが長くないことを薄々気づいているし、受け入れている。だから、「弱気なことを言うな」とか「早く元気になれ」という返事はない。
決して彼が軽薄な人間だからではなく、現実的な考え方をいつもするからだ。
「セナは……姉さんに告白しないんですか」
「しないよ。彼女を困らせたくない。……リアは俺のことを男として見てないから」
セナが子どものころからずっと、オリアーナに好意を寄せていることは知っている。知らないのはオリアーナだけだ。
セナはこう言っているが、オリアーナも満更ではないと思う。今はまだ自覚がないだけで。元婚約者のレックスより、セナは何百倍もいい男だ。オリアーナがレックスと婚約解消できたことだけは幸いだったと思う。
(でもこれは、セナと姉さんの問題ですから。僕が口出しするようなことではありませんね)
レイモンドは苦笑した。
セナは心からオリアーナを想ってくれている。だからこそ、彼になら安心して姉のことを任せられるだろう。
「セナは随分強くなりましたね」
「……ずっと、お前を追いかけてきたからね。アーネル公爵家始まって以来の逸材のお前を」
「ふ。光栄です。姉さんを護るなら、僕くらい超えてくれないと困ります」
「それはあと三回くらい生まれ変わらないと無理かもな」
「買い被りすぎです」
庭に飛ぶ光の蝶に視線を移す。レイモンドが意図すると、蝶はそれに従って室内に戻ってきて、セナの指に止まった。