【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


(姉さんは優しいから……。事実を知ったら自分を責めたり、余計な苦悩を背負ってしまうかもしれません)

 レイモンドが人並外れた魔力を持っているのは、ひとりの身体で始祖五家アーネル公爵家――二人分の力を保有しているからだ。
 オリアーナは生まれつき魔力の供給源である魔力核を有していなかった。そしてレイモンドは、母親の腹の中で、本来オリアーナが持つはずだった魔力核まで奪ってしまった。

 レイモンドの病は、本来ひとつしか持たないはずの魔力核を二つ、体内に有してしまう病気だ。

 その事実に気づいたのは、最近になってからだ。魔力核は目で見ることはできない。しかし、核の中の魔力が増幅する度、自分のものとは明らかに違う神聖な魔力が、身体を破壊する勢いで膨れ上がっていることに気づいた。それはまさに、オリアーナが持つはずだった――聖女としての神聖な魔力だ。

 魔力核について調べるために、あらゆる論文を取寄せて読み漁ったものの、現在の魔法医学では治療法が確立されていないと分かった。

 きっとオリアーナは、自分が持つはずだった魔力核が弟の身体中を破壊し尽くしていると知ったら、心を痛めるだろう。両親が知れば、何も悪くないオリアーナを理不尽に責めるかもしれない。

 だから、沈黙を守るしかなかった。 



 ◇◇◇



 転移魔法で強制的に部屋から追い出されたオリアーナは、部屋の扉を叩いた。

「レイモンド! 話はまだ終わってないよ! ここを開けるんだ!」

 しかし、扉を叩くオリアーナの肩にセナが手を置き、「やめろ」と窘めるように首を横に振った。

「リア。……魔力の異常増幅って何? 俺も初めて聞いたんだけど」
「今日……リヒャルト王子から聞いた。レイモンドは随分前から、身体の内側から爆発するように魔力が増えているらしい」
「…………」

 セナは顎に手を添えてしばらく思案した。
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