【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜

 ◇◇◇



 性別は関係なく、オリアーナという人間が大好きだ。いつでも気高く凛としていて、誰よりもかっこいい彼女が。

 ジュリエットは、出会ったその日に彼女に心を奪われた。それは衝撃的な出会いだった。

 12歳のとき。街にメイドを連れて買い物に出かけた日、ひったくりに遭った。ハンドバッグを奪われ、すぐに犯人を火で燃やしてやりたい衝動に駆られたが、ぐっと堪える。魔法士は資格なしで一般人に対し力を行使してはならない決まりだからだ。魔法士の資格は、学校に入学してから取ることができる。

「ひったくりー! 誰かー!」

 傍らでメイドが声を上げる。あのバッグには大したものが入っていないので、もういいと彼女に言おうとしたときだった。

「お嬢さん。ひったくり犯って、どいつ?」
「え……あの、緑の帽子に色眼鏡の……」
「分かった。ちょっと待ってて」

 中性的ですらりとした体躯の青年が、ジュリエットに玲瓏と言い、走り始めた。その後ろ姿を見て、直感する。

(あの方、男性ではなく……女性、ですわ)

 犯人とはかなり距離があるのに、ぐんぐん距離を縮めていき、一回り以上大きな男を投げ倒す。片手で男の腕を拘束し、膝で男の背を地面に押さえつけた。

 あまりに迅速な動きだった。周りの人々も彼女の勇姿に感激し、拍手を送る。
 ジュリエットとメイドはすぐに、彼女の元に駆け付けた。盗られたバッグを返却される。

「ありがとう……ございます」
「無事に君の手に戻ってよかったよ。中身を一応確認してくれるかな? あ、この男は私が責任をもって自警団に引き渡すから」
「まだ他に……盗まれたものがございますわ」
「本当に?」

 彼女は地に伏した男を睨み付けた。
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