【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜




 医務室で借りてきたタオルの山を抱え、ついでにオリアーナに好意を寄せる令嬢も連れて、教室に戻る。オリアーナは机に頬杖を突き、物憂げな表情で窓の外を眺めていた。彼女の切なげな表情に、ぎゅうと胸が締め付けられる。彼女の憂いを晴らしてあげられたらいいのに。

(オリアーナ様には、いつも笑っていてほしいですわ)

 オリアーナは、教室に戻ったジュリエットに気づき、愛想よく微笑んだ。

「お帰りジュリエット……って、その山のようなタオルは何?」
「レイモンド様の瞼を温めるためのものですわ」

 ジュリエットがタオルに魔法をかけると、あっという間にホットタオルになる。ほのかに湯気が立つ適温にしてある。オリアーナは、「僕の目は二つしかないはずなんだけどな」と苦笑しながら、タオルを受け取った。

「それで、その女の子は?」

 オリアーナは手紙を持った女子生徒に視線を向けた。ジュリエットは、彼女の背をそっと叩いた。

「わ、私は……キャロル・ララセルといいます……あの、私、私……っ」

 キャロルは、オリアーナを前にして動揺してしまい、泣いてしまった。オリアーナは立ち上がり、キャロルに視線を合わせて屈みながら微笑みかけた。

「――大丈夫。ちゃんと聞くから、ゆっくり」

 宥められて、こくこくと頷くキャロル。
 ああ、やっぱりこの人は素敵だ。優しくて、気高くて、凛としていて。どんな物語の王子様にだって負けない。

「少し前に……落し物を一緒に探していただいて……」
「ああ、思い出した。生徒手帳の」
「そうです……! その節は、本当にお世話になりました……。それで、この手紙、受け取ってください……!」

 オリアーナは、封蝋に赤いハートが刻まれているのを見て、おおよその内容を察した。
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