彼女の最後のビデオレター
彼女の最初の本音
:まゆがメッセージを送信しました
まゆ:やっほー!
涼真:何?
まゆ:あははっ、先生に怒られちゃった
涼真:なんで?電車乗ったのバレたの?
まゆ:この間無理しすぎたから心臓に異状が見られたんだって
涼真:それって大丈夫なの?
まゆ:知らない
涼真:自分の体なんだから興味持ちなよ
まゆ:とりあえず彼氏役さん、暇だから病室来てよ
涼真:なんか皮肉言われてる気がするから足が進まないな
まゆ:ねえーー!お願いお願い!
涼真:わかったよ
涼真:心臓に異状が見られたって大丈夫なのかな?
涼真:さすがに天真爛漫(てんしんらんまん)な彼女でも落ち込んでるだろうし、慰めの言葉でも考えるか
0:涼真はドアを開ける
涼真:やあ、まゆ
まゆ:わああーー!!涼真ーー!!おはよおはよおはよーー!!
涼真:………
まゆ:なーにその顔ー!いつもの5倍くらいしけた顔してるじゃーん!
涼真:帰ってもいいかな?
まゆ:はい、帰さない!ここに座って?
涼真:はいはい
まゆ:りんごもあるよ?剥いて?
涼真:俺はまゆの奴隷じゃないぞ
まゆ:そうだよね、彼氏役だもんね
涼真:うるさい
まゆ:まーたツンケンしてるー写真撮ろ?
涼真:誰がそうさせたんだか。写真ももう慣れてきた
まゆ:慣れてきたんだ〜私色に染まるの?彼氏役さん?
涼真:なんで君色に染まらないといけないんだよ!本物の彼氏じゃあるまいし
まゆ:ああ!大きな声で彼氏じゃないって言わないでよ!先生にバレちゃう!
涼真:何が?
まゆ:あ、ほら!
0:まゆの病室からは例の先生が覗きに来る
まゆ:あ、あははー!彼氏とデート中だから覗きに来ないでねー先生
涼真:ちょ!手握らないでもらえる!?
まゆ:しょうがないでしょ
まゆ:じゃあねー!先生
0:先生はまゆの病室を去る
まゆ:はあ、危なかった
涼真:ほんとに君は問題児だね
まゆ:なんで!?
涼真:別に
まゆ:あー!わかった。手握られてドキドキしてたんでしょ!?
涼真:し、してないよ!
まゆ:顔赤くなってるよー?ぷぷぷー
涼真:その点滴引っこ抜いたら君の寿命無くなるかな?
まゆ:やめてよ!ただでさえ寿命短いんだから!
まゆ:涼真、彼女いたことないの?
涼真:ほっといてくれ
まゆ:そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃん、私も居たことないし
涼真:そうなの?
まゆ:うん。だって生まれた時からずっと病院にいたんだよ?ここの病棟は死にかけのおじいちゃんおばあちゃんと私だけなの
涼真:酷い言い方だな
まゆ:だからさ、たまーにこっそり1階に行って誰かいないかなーって見てたんだ
涼真:それで俺を見つけたのか
涼真:とんだとばっちりだよ
まゆ:酷い言い方は涼真もじゃん!
涼真:なんで俺を彼氏役にしたんだ?
まゆ:なんでって?なんでだろ?
涼真:なんだよそれ
まゆ:わかんないよ。でもあの時の涼真は人助けしてた気がする
涼真:そんなことしてたかな?
まゆ:そうだよ。なんか優しそうだったから彼氏役にしたの
まゆ:今も来てって言ったら来てくれるし?
涼真:今すぐにでも帰っていいんだよ?
まゆ:ごめんってー。怒らないの。はい笑顔でピース!写真撮ろ?
涼真:全く
まゆ:でもさ、どうして涼真は私のわがままに付き合ってくれるの?
涼真:一応わがまま言ってる自覚はあったんだね
涼真:それこそ俺にもわかんないけど、まゆは一瞬だけ悲しそうな顔を浮かべるんだよ
まゆ:悲しそうな顔?そんなのしてないよ?
涼真:じゃあ無意識なんだね、まゆは海を見ると必ず悲しそうな顔をするんだよ
まゆ:……そうだったんだ
涼真:いつもこんな能天気な君が悲しそうな顔をしてると、違和感あるでしょ?
まゆ:んー確かにそうだね
まゆ:じゃあこれからは元気100倍で生きるね!
涼真:そういう問題じゃないでしょ
涼真:まゆは自分の病気が怖いと思ったことないの?
まゆ:そんなのあるわけないじゃん。どうせいつか死ぬってわかってるんだから
涼真:さっぱりしてるなー
まゆ:だって、明日死ぬかもしれないのにいちいち怖がってられないよ
まゆ:私はごく普通の毎日を過ごせるだけで満足だからね
涼真:そうなんだね
まゆ:うん!だから涼真も後悔のないように生きたまえ
涼真:余計なお世話かな
まゆ:まーた冷たくしてー
まゆ:………うっ!いったたた…ごめん。発作かも
涼真:え?だ、大丈夫?
まゆ:うん…とりあえず帰ってもいいよ
涼真:………なんで?
まゆ:痛がってるところ見られたくないんだもん
涼真:………でも、そんな急に言われたって
まゆ:私は大丈夫。またラインするね
涼真:………まゆ
:4話に続く