ヴァンパイア王子と秘密の甘い独占契約
「あんた、桧山雫でしょ」


集まりの中心で泣いていた子が、真っ赤な目でこちらを睨みつけた。


いつもの私なら、ここで「ひっ!」とか細い悲鳴を上げるところだけど。


目の前にいたのがあまりにも意外の人物過ぎて、まばたきを忘れるぐらい目を見開いてしまう。


「姫、咲……さん」


私に気付いたのは、昼間急に私と御影くんの間に割り込んできた姫咲さんだった。


昼休みに見た時と違って、別人レベルに態度が違う。


姫咲さんを取り巻く女子達も、一緒になって私をキッと睨みつけるものだから、湿っぽかった空気が嘘みたいに、一気にピリピリと張り詰め出した。


……うう、私のバカ。


変に野次馬なんかしなければ、こんなことにはならなかったのに。


今更後悔したってもう遅い上に、逃げ出そうにも、靴の裏が床に縫い付けられたみたいに動かない。


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