恋愛マスターでイケボな彼の初恋を奪ってしまいました
第五話
偽装彼女のお見舞い
○学校・教室(朝)
知奈(昨日のあれって、どういう意味だったんだろう……)
自分の席でぼんやりと考え事をする知奈。
ちらりと見れば頼斗の席はまだ空席。
知奈(頼斗君、まだ来てないし)
先生が入ってくる。
女子「先生ー、篠宮君はお休みですかあ?」
先生「そうだ。風邪だって連絡があった」
知奈(えっ)
先生「じゃあ授業はじめるぞー」
知奈(頼斗くん大丈夫かな? 昨日は元気そうだったけど……)
知奈(一応メッセージしてみようかな)
こっそりスマホを取り出し「大丈夫?」とメッセージを送る。
○頼斗の部屋(放課後)
頼斗はベッドで寝ている。熱があり汗をかいている。
ノックされて扉が開く。
同時に目を覚ます頼斗。
竹田さん(50代くらいの家政婦)「頼斗さん、お加減いかがですか?」
頼斗「え、あ、……大丈夫です」
竹田さん「具合が悪いなら病院にお連れしましょうか?」
頼斗「いや、本当に平気です」
竹田さん「そうですか? じゃあ今日はこれで失礼しますね」
頼斗「はい。ありがとうございました」
扉閉めて去って行く竹田さん。
頼斗(最悪だ。こんな時に風邪とか)
頼斗(あいつ……宗介? 知奈に変なことしてないだろうな)
昨日の知奈の怯えたような様子を思い出す。
頼斗(本当にあいつが、知奈の……?)
ふとスマホが光っていることに気づいて手に取る。。
メッセージを見ると知奈から「大丈夫?」と、メッセージとともに心配そうな犬のスタンプが来ている。
ふっと笑みをこぼしてまたまどろむ頼斗。
○頼斗の家の前(放課後)
高級低層マンションを見上げて怖じ気づいた顔の知奈。
知奈「ふおお、お金持ちの家だ……」
知奈(どうしよう、来てよかったのかな。でもメッセージの返事ないから心配だったし)
知奈(先生に聞いたらあっさり住所教えてくれるんだもんな……)
知奈「でもいきなり来るなんて逆に迷惑だよね? どうしよう……」
家の前でおろおろしていると中から竹田さんが出てきて知奈に気づく。
竹田さん「もしかして、頼斗さんのお友達ですか?」
知奈「えっ、頼斗君の……お母さんですか?」
竹田さん「いえいえ、私は竹田といいます。頼斗さんのお宅の清掃やお料理をさせてもらっているんですよ」
知奈「家政婦さん!? す、すご」
知奈(あれ? でもおうちの人って?)
竹田さん「頼斗さん、今はお休みになられているかもしれません」
知奈「えっそんなにひどいんですか?」
竹田さん「ご本人は大丈夫と言っていましたが……」
竹田さんは顔を曇らせている。あまり状態が良くないのを察する知奈。
知奈「あの、中で待たせてもらっていいですか?」
竹田さん「え?」
知奈「か、彼女なんです」
竹田さん「あらあら、そうだったんですか」
竹田さんはほっとして嬉しそうに笑顔を見せる。
○頼斗の部屋(放課後)
知奈(頼斗くんの部屋、ここって言ってたよね?)
中に入れてもらった知奈はそっと頼斗の部屋に入る。
知奈「し、失礼しまーす」
知奈(うう、すごい悪いことしてる気分。でも倒れてたら心配だし)
部屋では頼斗がベッドで寝ている。
少し汗をかいているけど、寝息は穏やか。
知奈「良かった……」
ひとまずはほっとする知奈。
知奈(おうちの人はお仕事なのかな。心配だし、帰ってくるまで待たせてもらおう)
知奈はベッドの隣に座る。
知奈(宗介くんの言ってたことって本当なのかな?)
思い出すのは宗介の誠実そうな謝罪。
知奈(嘘ついてるようには見えなかった)
知奈(女友達の嫉妬も……ありそう)
教室に来たとき、まわりの反応が凄かったことを思い出して苦笑する。
知奈(真面目な人なんだろうな。ずっと前のことなのに私に謝りたいって)
知奈「でも、いまさら困るよ。改めて告白だなんて」
知奈の顔は辛そうに曇る。
知奈「……こういうときは、リト君の声を聞こう」
気を取り直そうとスマホにイヤホンを差し、リトのアーカイブを聞く。
リト「『好意をもってない男の子から告白されて困ってます』。あー、たしかに、応えられない気持ちを向けられるのは辛いよね」
リト「はっきり断っていいんじゃないかな。むしろ思わせぶりな態度とられるほうが相手も苦しいと思う」
知奈「そうだよね。リトくんもこう言ってることだし」
リト「次の相談は……『付き合って三年経つけど彼氏が好きすぎて困ってます』? ぶはっ、これ惚気じゃん」
知奈「爆笑するリトくんかわいい……」
うっとりしていると、サイドテーブルに置いてあった頼斗のスマホにメッセージの通知が来る。
相手は竹田さんで「冷蔵庫におかずが入ってます」とポップアップが出る。
そして待ち受けを見てしまう。それは知奈が水族館のクラゲゼリーにはしゃいでいるところ。
知奈「え……?」
頼斗「うるさ……」
頼斗が不機嫌そうに起きる。
知奈「え、ごめっ、あれでもイヤホン……」
よく見ればイヤホンが抜けている。
知奈「わああ、ごめん!」
頼斗「え、なんで知奈がいるの」
知奈「あ、えっと、お見舞いに来たら竹田さんがいれてくれて。すごいね家政婦さんなんて」
頼斗「いや週二で通いだし別に……というかお見舞い? 来てくれたのか?」
知奈「メッセージに返信ないから心配で」
頼斗「うそだろ……」
嬉しそうな頼斗。
頼斗「で、なんで配信聞いてるの」
知奈「いやこれは、落ち込んだときとか迷ったときとか、いつも聞いてて」
頼斗「ふーん……本人が目の前にいるのに?」
知奈「え?」
頼斗「すればいいじゃん。相談」
知奈「い、いいよそんな。もう大丈夫だから。なんか勇気もらえたし」
頼斗「……俺は直接言って欲しいけど。知奈のことならなんでも」
知奈「っ、あ、ありがとう……」
照れる知奈。
知奈「でも本当に大丈夫だから! それよりも頼斗くんちゃんと食べてる?」
頼斗「食欲ない」
知奈「だめだよ、ちょっとでも食べないと治らないよ? おうちになにかある?」
頼斗「あー……竹田さんが用意したものがあるかも」
知奈「持ってこようか?」
頼斗「いらない」
知奈「もう……おかゆだったら食べられる?」
頼斗「いらな――」
知奈「それくらいだったら作れるけど」
頼斗「食べる」
目がキラリと光り、かぶせ気味に即答な頼斗。
しばらくして、知奈がおかゆを持ってくる。
知奈「はい、できたよ」
それをスマホで撮る頼斗。
知奈「えっ、なんで」
頼斗「知奈だってゼリー撮ってたじゃん」
知奈「おかゆはかわいくないよ!?」
頼斗はおかゆを一口食べる。
頼斗「おいしい」
ぱくぱく食べ進める頼斗見て、知奈は一安心。
知奈「それだけ食べられたら大丈夫だね。きっとすぐ良くなるよ」
頼斗「明日は必ず学校行くから」
知奈「無理しないほうがいいよ。おうちの人がなんて言うかもわからないし」
頼斗「別になにも言わない。一緒に住んでないから」
知奈「えっ」
頼斗「両親は海外出張ばっかでほとんど家に帰ってこない」
知奈「そうだったんだ……」
頼斗「親に看病してもらった経験もないから、なんか新鮮だ。ありがとう」
知奈「そ、そんな、いいんだよ。これくらいいくらでも作るよ」
頼斗「本当か? じゃまた風邪ひく」
知奈「もう……」
知奈(暇つぶしで配信はじめたって言ってたけど、寂しかったりするのかな?)
知奈(こんな広い家に一人なんだもんね)
黙ってしまった知奈を見て頼斗は自嘲する。
頼斗「引いた? 子供放置する親なんて」
頼斗「一応中学のころは祖母の家に預けられてたんだけど、高校上がる直前に亡くなって、そこからはこの家に住んでるんだ」
頼斗「おかしいよな。家族の愛情も知らないのに恋愛相談なんて」
知奈「そ、そんなの関係ないよ! リトくんは誠実に悩み相談に乗ってるじゃん」
頼斗「どうだろうな」
弱った横顔をみて知奈はなんだか切なくなってしまう。
知奈「私、時々遊びにこようか? そしたら寂しくないと思うし」
頼斗「……へえ?」
にやりとする頼斗。
ぐっと顔が近づいてくる。
頼斗「それ、どういう意味かわかってる?」
知奈「え?」
頼斗「男が一人で住んでる家に来るって意味」
頼斗「この間の続きされても、文句言えないよな?」
知奈「っ!!」
顔がどんどん近づいてきて、キスされそうな距離。
知奈はドキドキして動くことができない。
知奈(ど、どうしよう)
ぎゅっと目をつぶったが一向にキスされる気配はない。
目を開けると、頼斗は肩口に顔を埋めて寝ている。
知奈「えっ!?」
額に手を当ててみるととても熱い。
知奈「よ、頼斗君、薬! 薬と水分とって寝て!!」
頼斗「ん……」
ドタバタと看病する知奈。
○学校・空き教室(お昼)
翌日の学校、けろっとした頼斗と心配そうな知奈が二人でいる。
知奈「本当に大丈夫なの? 今日も休んだ方が良かったんじゃ」
頼斗「いや、平気。それよりなんで勝手に帰ったんだよ」
知奈「勝手じゃないよ! 帰るよって言ったし、メッセージもしたもん!」
看病を終え、まだ眠る頼斗に「帰るからなにかあったら言ってね」とメッセージして帰っていった知奈。
頼斗「ていうか俺がいない間宗介に変なことされなかったか?」
知奈「さ、されてないよ!」
知奈(変なことしようとしたのは頼斗くんじゃん……!)
キスされそうになったことを思いだして真っ赤に。
知奈(覚えてないのかな?)
頼斗「なに?」
知奈「別に」
頼斗「なんで怒ってるんだよ」
知奈「怒ってないよ。わ、私、大変だったんだからね。他のクラスの子からも頼斗君なんで休みなのって休み時間のたびに聞かれて」
頼斗「彼女だからだろ」
知奈「彼女の振り、ね。みんな恋人が嘘だって知らないから……」
頼斗「じゃあ……恋人役やめて、本当の恋人になる?」
知奈「な……なに言ってるの!」
思わず頼斗の腕をばしっとツッコミするように叩く。
頼斗「いてっ」
知奈は内心ばくばく。
外では先生にノートを運ぶよう頼まれた宗介が教室の前を通りがかってそれを聞いている。
宗介「まじかよ……」
唖然として立ち尽くす宗介。
知奈(昨日のあれって、どういう意味だったんだろう……)
自分の席でぼんやりと考え事をする知奈。
ちらりと見れば頼斗の席はまだ空席。
知奈(頼斗君、まだ来てないし)
先生が入ってくる。
女子「先生ー、篠宮君はお休みですかあ?」
先生「そうだ。風邪だって連絡があった」
知奈(えっ)
先生「じゃあ授業はじめるぞー」
知奈(頼斗くん大丈夫かな? 昨日は元気そうだったけど……)
知奈(一応メッセージしてみようかな)
こっそりスマホを取り出し「大丈夫?」とメッセージを送る。
○頼斗の部屋(放課後)
頼斗はベッドで寝ている。熱があり汗をかいている。
ノックされて扉が開く。
同時に目を覚ます頼斗。
竹田さん(50代くらいの家政婦)「頼斗さん、お加減いかがですか?」
頼斗「え、あ、……大丈夫です」
竹田さん「具合が悪いなら病院にお連れしましょうか?」
頼斗「いや、本当に平気です」
竹田さん「そうですか? じゃあ今日はこれで失礼しますね」
頼斗「はい。ありがとうございました」
扉閉めて去って行く竹田さん。
頼斗(最悪だ。こんな時に風邪とか)
頼斗(あいつ……宗介? 知奈に変なことしてないだろうな)
昨日の知奈の怯えたような様子を思い出す。
頼斗(本当にあいつが、知奈の……?)
ふとスマホが光っていることに気づいて手に取る。。
メッセージを見ると知奈から「大丈夫?」と、メッセージとともに心配そうな犬のスタンプが来ている。
ふっと笑みをこぼしてまたまどろむ頼斗。
○頼斗の家の前(放課後)
高級低層マンションを見上げて怖じ気づいた顔の知奈。
知奈「ふおお、お金持ちの家だ……」
知奈(どうしよう、来てよかったのかな。でもメッセージの返事ないから心配だったし)
知奈(先生に聞いたらあっさり住所教えてくれるんだもんな……)
知奈「でもいきなり来るなんて逆に迷惑だよね? どうしよう……」
家の前でおろおろしていると中から竹田さんが出てきて知奈に気づく。
竹田さん「もしかして、頼斗さんのお友達ですか?」
知奈「えっ、頼斗君の……お母さんですか?」
竹田さん「いえいえ、私は竹田といいます。頼斗さんのお宅の清掃やお料理をさせてもらっているんですよ」
知奈「家政婦さん!? す、すご」
知奈(あれ? でもおうちの人って?)
竹田さん「頼斗さん、今はお休みになられているかもしれません」
知奈「えっそんなにひどいんですか?」
竹田さん「ご本人は大丈夫と言っていましたが……」
竹田さんは顔を曇らせている。あまり状態が良くないのを察する知奈。
知奈「あの、中で待たせてもらっていいですか?」
竹田さん「え?」
知奈「か、彼女なんです」
竹田さん「あらあら、そうだったんですか」
竹田さんはほっとして嬉しそうに笑顔を見せる。
○頼斗の部屋(放課後)
知奈(頼斗くんの部屋、ここって言ってたよね?)
中に入れてもらった知奈はそっと頼斗の部屋に入る。
知奈「し、失礼しまーす」
知奈(うう、すごい悪いことしてる気分。でも倒れてたら心配だし)
部屋では頼斗がベッドで寝ている。
少し汗をかいているけど、寝息は穏やか。
知奈「良かった……」
ひとまずはほっとする知奈。
知奈(おうちの人はお仕事なのかな。心配だし、帰ってくるまで待たせてもらおう)
知奈はベッドの隣に座る。
知奈(宗介くんの言ってたことって本当なのかな?)
思い出すのは宗介の誠実そうな謝罪。
知奈(嘘ついてるようには見えなかった)
知奈(女友達の嫉妬も……ありそう)
教室に来たとき、まわりの反応が凄かったことを思い出して苦笑する。
知奈(真面目な人なんだろうな。ずっと前のことなのに私に謝りたいって)
知奈「でも、いまさら困るよ。改めて告白だなんて」
知奈の顔は辛そうに曇る。
知奈「……こういうときは、リト君の声を聞こう」
気を取り直そうとスマホにイヤホンを差し、リトのアーカイブを聞く。
リト「『好意をもってない男の子から告白されて困ってます』。あー、たしかに、応えられない気持ちを向けられるのは辛いよね」
リト「はっきり断っていいんじゃないかな。むしろ思わせぶりな態度とられるほうが相手も苦しいと思う」
知奈「そうだよね。リトくんもこう言ってることだし」
リト「次の相談は……『付き合って三年経つけど彼氏が好きすぎて困ってます』? ぶはっ、これ惚気じゃん」
知奈「爆笑するリトくんかわいい……」
うっとりしていると、サイドテーブルに置いてあった頼斗のスマホにメッセージの通知が来る。
相手は竹田さんで「冷蔵庫におかずが入ってます」とポップアップが出る。
そして待ち受けを見てしまう。それは知奈が水族館のクラゲゼリーにはしゃいでいるところ。
知奈「え……?」
頼斗「うるさ……」
頼斗が不機嫌そうに起きる。
知奈「え、ごめっ、あれでもイヤホン……」
よく見ればイヤホンが抜けている。
知奈「わああ、ごめん!」
頼斗「え、なんで知奈がいるの」
知奈「あ、えっと、お見舞いに来たら竹田さんがいれてくれて。すごいね家政婦さんなんて」
頼斗「いや週二で通いだし別に……というかお見舞い? 来てくれたのか?」
知奈「メッセージに返信ないから心配で」
頼斗「うそだろ……」
嬉しそうな頼斗。
頼斗「で、なんで配信聞いてるの」
知奈「いやこれは、落ち込んだときとか迷ったときとか、いつも聞いてて」
頼斗「ふーん……本人が目の前にいるのに?」
知奈「え?」
頼斗「すればいいじゃん。相談」
知奈「い、いいよそんな。もう大丈夫だから。なんか勇気もらえたし」
頼斗「……俺は直接言って欲しいけど。知奈のことならなんでも」
知奈「っ、あ、ありがとう……」
照れる知奈。
知奈「でも本当に大丈夫だから! それよりも頼斗くんちゃんと食べてる?」
頼斗「食欲ない」
知奈「だめだよ、ちょっとでも食べないと治らないよ? おうちになにかある?」
頼斗「あー……竹田さんが用意したものがあるかも」
知奈「持ってこようか?」
頼斗「いらない」
知奈「もう……おかゆだったら食べられる?」
頼斗「いらな――」
知奈「それくらいだったら作れるけど」
頼斗「食べる」
目がキラリと光り、かぶせ気味に即答な頼斗。
しばらくして、知奈がおかゆを持ってくる。
知奈「はい、できたよ」
それをスマホで撮る頼斗。
知奈「えっ、なんで」
頼斗「知奈だってゼリー撮ってたじゃん」
知奈「おかゆはかわいくないよ!?」
頼斗はおかゆを一口食べる。
頼斗「おいしい」
ぱくぱく食べ進める頼斗見て、知奈は一安心。
知奈「それだけ食べられたら大丈夫だね。きっとすぐ良くなるよ」
頼斗「明日は必ず学校行くから」
知奈「無理しないほうがいいよ。おうちの人がなんて言うかもわからないし」
頼斗「別になにも言わない。一緒に住んでないから」
知奈「えっ」
頼斗「両親は海外出張ばっかでほとんど家に帰ってこない」
知奈「そうだったんだ……」
頼斗「親に看病してもらった経験もないから、なんか新鮮だ。ありがとう」
知奈「そ、そんな、いいんだよ。これくらいいくらでも作るよ」
頼斗「本当か? じゃまた風邪ひく」
知奈「もう……」
知奈(暇つぶしで配信はじめたって言ってたけど、寂しかったりするのかな?)
知奈(こんな広い家に一人なんだもんね)
黙ってしまった知奈を見て頼斗は自嘲する。
頼斗「引いた? 子供放置する親なんて」
頼斗「一応中学のころは祖母の家に預けられてたんだけど、高校上がる直前に亡くなって、そこからはこの家に住んでるんだ」
頼斗「おかしいよな。家族の愛情も知らないのに恋愛相談なんて」
知奈「そ、そんなの関係ないよ! リトくんは誠実に悩み相談に乗ってるじゃん」
頼斗「どうだろうな」
弱った横顔をみて知奈はなんだか切なくなってしまう。
知奈「私、時々遊びにこようか? そしたら寂しくないと思うし」
頼斗「……へえ?」
にやりとする頼斗。
ぐっと顔が近づいてくる。
頼斗「それ、どういう意味かわかってる?」
知奈「え?」
頼斗「男が一人で住んでる家に来るって意味」
頼斗「この間の続きされても、文句言えないよな?」
知奈「っ!!」
顔がどんどん近づいてきて、キスされそうな距離。
知奈はドキドキして動くことができない。
知奈(ど、どうしよう)
ぎゅっと目をつぶったが一向にキスされる気配はない。
目を開けると、頼斗は肩口に顔を埋めて寝ている。
知奈「えっ!?」
額に手を当ててみるととても熱い。
知奈「よ、頼斗君、薬! 薬と水分とって寝て!!」
頼斗「ん……」
ドタバタと看病する知奈。
○学校・空き教室(お昼)
翌日の学校、けろっとした頼斗と心配そうな知奈が二人でいる。
知奈「本当に大丈夫なの? 今日も休んだ方が良かったんじゃ」
頼斗「いや、平気。それよりなんで勝手に帰ったんだよ」
知奈「勝手じゃないよ! 帰るよって言ったし、メッセージもしたもん!」
看病を終え、まだ眠る頼斗に「帰るからなにかあったら言ってね」とメッセージして帰っていった知奈。
頼斗「ていうか俺がいない間宗介に変なことされなかったか?」
知奈「さ、されてないよ!」
知奈(変なことしようとしたのは頼斗くんじゃん……!)
キスされそうになったことを思いだして真っ赤に。
知奈(覚えてないのかな?)
頼斗「なに?」
知奈「別に」
頼斗「なんで怒ってるんだよ」
知奈「怒ってないよ。わ、私、大変だったんだからね。他のクラスの子からも頼斗君なんで休みなのって休み時間のたびに聞かれて」
頼斗「彼女だからだろ」
知奈「彼女の振り、ね。みんな恋人が嘘だって知らないから……」
頼斗「じゃあ……恋人役やめて、本当の恋人になる?」
知奈「な……なに言ってるの!」
思わず頼斗の腕をばしっとツッコミするように叩く。
頼斗「いてっ」
知奈は内心ばくばく。
外では先生にノートを運ぶよう頼まれた宗介が教室の前を通りがかってそれを聞いている。
宗介「まじかよ……」
唖然として立ち尽くす宗介。